第二十二章 霊媒師 岡村英海

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長年住み慣れた ”虹の橋のふもとの広場”、大福が此処から現世に行ったのは、女性が来てから3日後の事だった。 あの日の様子をすべて視ていたおはぎは、大福が現世に行くと言いに来た時、それを全力で止めていた。 『なんで!? なんで小雪が現世に行くの? 生まれ変わるの? チガウの? じゃあ行かなくていいじゃない! ココにいればいいじゃない!』 そう言われた大福は、 『そういう訳にはいかないわ。これは規則なの。行かなくちゃダメなの』 静かに答える。 『キソクってなに? なんでダメなの? 猫はなにしても良いんだよ? 前にトウとカアが言ってた、キケンなコト以外はなにしても良いって! 好きなコトすればいいって!』 おはぎも負けじと一生懸命言い返す……が、大福は寂しく笑うだけだった。 『ん……規則は……規則よ。ココに来た時、最初に説明があったでしょう? 覚えてない?』 『ない!』 『そう、覚えてないのね……、……”虹の橋のふもと”の入場にあたり、注意事項第22条。飼い主が死亡後も迎えに来なかった場合、または複数のペットを飼っていてお迎え対象に選ばれなかった場合、単独で黄泉の国へ進む事はできない”……よ』 『へ、へにゃ? ニジュウニジョウ? タイショウ? タンドク……? へにゃ……おはぎ、ムズカシイコト分かんないよぉ。でもね、でもね、トラの兄ちゃん達が言ってた。小雪にもしお迎えが来なかったらウチに来れば良いって。トラの兄ちゃんだけじゃないよ、他の兄ちゃんも姉ちゃんも言ってたし、おはぎもそれが良いと思うにゃ! トウもカアも猫が好きなの、小雪が来たら絶対に喜ぶよ!』 必死に食い下がるおはぎ、大福は首を横に振り続ける。 『……あのね、この規則はイジワルで作った規則じゃないの。必要だから作られたのよ。その理由はね、』 大福の説明は噛み砕かれて分かりやすいものだった、が、それでも、子供のおはぎには難しく、理解出来たのは半分くらいといったところだ。
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