第二十二章 霊媒師 岡村英海

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先代は……すべてを知っていたのかもしれないな。 ____大福ちゃんは元々、黄泉の国にある動物達の楽園、 ____虹の橋地区にいた子なの、 ____その大福ちゃんがこの世に来たのは、 ____ある理由から、この世の誰か1人でも幸せにする為だったんだ、 そうだよ、前に先代はこんな事を言っていたじゃないか。 大福は、先代には自分の事情を話していたんだ。 僕には何も話してくれないのに。 今回、おはぎの過去を霊視した事により、思いがけず大福の過去まで知ってしまった。 知った事で、あの時のあの出来事はそういう意味だったのか……と気づいた事がいくつかある。 キーマンさんを諭していた時、大福はこんな事を言っていた。 ____幸せだな、おまえは平蔵にちゃんと覚えてもらっている、 ____愛する人に、大事な人に存在ごと忘れられた私とは雲泥の差だよ、 と。 あの時は、なんの事だか分からなかったけど、そういう意味だったんだ。 それからチビクマの時もそうだ。 チビクマの大好きなお姉さま、るりさんと再会出来ると決まった時、あの仔はクマに寄り添い嬉しそうにはしゃいでた。 帰りの車で2匹は大騒ぎをしてたんだ。 あれはきっと、過去の自分を思い出したのではないだろうか? 自分は忘れられたけど、クマはちゃんと覚えてもらっていた。 これから始まるクマの幸せ、それを想像して、自分と重ねて疑似体験をしてたのでは……と思ってしまう。 大福……ごめんよ、ヒント、いっぱいあったのに。 辛かった事、悲しかった事、なんにも知らなくて本当にごめんよ、 これからは今以上に大事にするからね、 すべてにおいて優先するは大福だ、 そりゃあ今でもそうだけど、もっと、もっともっと、 大福がしたい事、行きたい所、望む事はすべて叶えてやりたいよ、 お姫をもっと大事にする、改めて誓った僕だが、今はおはぎを霊視中と気を引き締めた(仕事をきちんとする事が、大福を守る事に繋がるんだと思うの)。 気合いを入れて、改めておはぎを視れば……仔猫はすっかりしょげていた。 無理もない……大好きな大福とハムスターまでいなくなったのだ。 落ち込むに決まってるよ。
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