第二十二章 霊媒師 岡村英海

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蛇ちゃんにそう言われ、おはぎは慌てたように飛び起きた。 『イヤじゃないにゃ! おはぎ、コンちゃん大好きだもん!』 ん? 蛇ちゃんの名前は ”コン” ちゃんっていうのか。 可愛い名前だな。 霊体(からだ)の長さはニョロっと長くて1メートル(たぶんそのくらい)。 全体的にニンジン色で、つぶらなおめめはウサギみたいな赤色だ。 コンちゃんは、おはぎに大好きと言われたのが嬉しかったようで、『えへへ、ホント?』と照れていた。 『コンちゃん、なにして遊ぶ? おはぎは ”蛇ごっこ” がしたい!』 おはぎは元気にそう言った、……んだけど、”蛇ごっこ” ってなんだ? てかコンちゃん蛇だし、”ごっこ” もなにもないし、そのまんまだし。 僕にとっては謎の遊びなんだけど、提案されたコンちゃんは二つ返事で ”蛇ごっこ” に同意する。 『い、いいの!? ボクも ”蛇ごっこ” がしたいなぁって思ってたんだ! じゃじゃ、”蛇ごっこ” が終わったら、次は ”猫ごっこ” しようよ!』 ちょちょちょ、ちょっと待てーい! ”猫ごっこ” ってのもあるのか! 想像つかない、それってどういう遊びなの? なにするの? 楽しいの? 詳細を教えてくれー! と2匹を視てると、まずは ”蛇ごっこ” が始まった。 『じゃあボクから行くよ、せーの……せーの……ニョロー!』 わっ! なに!? とビックリしたけど……なんだ、立ち上がっただけか。 コンちゃんは長い霊体(からだ)を器用に起こし、地面に対して垂直に立っている。 おはぎはそんなコンちゃんを視て、目をキラキラさせて感心しきりでこう言った。 『へにゃー、さすがはコンちゃん、長いねぇ。でも、おはぎだって負けないにゃ! ニャロー!』 気合の入った掛け声の直後、サビ猫は両手を上げて後ろ足で立ち上がった……って、長ーーっ! まるでアレだ、ミーアキャットのバンザイポーズだ!(カワイー!) 両者共に向かい合い、にゅーんと長く上に伸び睨み合っている。 も、もしかして…… ”蛇ごっこ” とは格闘系の遊びなのだろうか……? ダメ! そんなのしたら危ないよ! と慌てたのに、どうもそうじゃないみたい。 『えへへ、ボクは元々霊体(からだ)が長いからね。おはぎには負けないよ』 コンちゃんが控え目ながら得意げにそう言うと、おはぎはタシタシ足を鳴らして悔しがる。 『へ、へにゃっ! 笑ってられるのも今のうちにゃ! 猫は伸びるんだよ、長いんだよ、視るにゃー! ニャローーン!』 おわっ! 力の抜ける掛け声をかけた直後、おはぎの霊体(からだ)がさらに上に伸びていく。 ぐんぐん伸び伸び、あっという間にコンちゃんに立ち並ぶ。 『ニョロロ! お、おはぎ、腕を上げたね! こんなに長くなるなんてボクビックリだよ!』 『へへへ、スゴイでしょ。おはぎオウチで練習したからね。でもコンちゃんだってすごいよ。尻尾の先だけで立ってるんだもん。これは引き分けかにゃ?』 互いに互いを認め合い、一緒になって笑う2匹。 てか……ん、これが ”蛇ごっこ” なんだ。 ニョロリと伸びて、その長さを競い合う遊びみたいだ。 正直、これのなにが面白いのか僕にはちっとも分からない……けど、ま、いっか。 久しぶりにおはぎがコロコロ笑ってる。 それだけで充分だ。
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