第二十二章 霊媒師 岡村英海

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”蛇ごっこ” が終わるとお次は ”猫ごっこ” が始まった。 それはどんな遊びかというと、ぽかぽか陽気の芝生の上で、どれだけ霊体(からだ)を丸く出来るか、それを競うものらしい。 僕はそれを上から眺めていたんだけどさ、なんじゃこりゃ。 猫も蛇も地面に寝ころび真ん丸で、微動だにしない。 しかもその体勢じゃあ、互いの霊体(からだ)は一部しか視えないし、どっちが丸いかジャッジのつけようがないと思うの。 ”猫ごっこ” …… ”蛇ごっこ” 以上に面白さが分からない。 てかこれ、もはや日向ぼっこじゃなかろうか。 陽ざしを浴びて気持ちよくなったのか、2匹はのんびりまったりお喋りを始めた。 『コンちゃん、遊んでくれてありがとね』 片目を開けて猫が言う。 すると蛇も片目を瞑りこう言った。 『ううん、ボクが遊びたかったんだ。おはぎと遊ぶの楽しいもん』 やだ、コンちゃん可愛い……! 天気は良いし、ほのぼのしてるし、この子達を視ていると幸せな気持ちになるよ。 だがしかし、ココから2匹のお喋りは真面目なものに変わっていって…… 『ねぇ、コンちゃんは知ってる……? 小雪のコト、』 『……うん、聞いた。現世に行く前、小雪が挨拶に来てくれたから』 『そか……、あのね、おはぎね、小雪の主さんが来た時、近くにいたの』 『そうなの……?』 『うん……小雪の主さん、ハムの主さんでもあったんだ。ハムは喋らない子だったから……その事、小雪も知らなかったみたいでね』 『そ、そうなの……!?』 『うん……それで……ハムの名前、本当は ”小雪” だったんだ』 『お、お、同じ名前!?』 『そう、同じだったの。主さんは……よく分からないけど、ハムスターの ”小雪” の事は覚えていたけど、猫の ”小雪” の事は忘れちゃったんだって。それでハムだけ連れてかえったの』 『そ、そんな……そんなのひどいよ……』 コンちゃんは相当ショックを受けたみたいで、丸めた霊体(からだ)を震わせていた。 話すおはぎも同様で、やっぱりプルプル震えてる。 『小雪、悲しかったと思う。だけどハムの事悪く言わないんだ。おはぎの所に来た時も、ハムは何も悪くないから、どこかで会ったらまた仲良くしてあげてねって』 『ボ、ボクにも言ってたよ、これからもハムと仲良くしてねって……というか、それしか言わなかった、ハムのせいで……とか、そゆのなんにも言わなくて、だから知らなかった』 『ん、小雪は優しいから、ハムの事、心配したんだと思うにゃ……もちろん、ハムとは今まで通り仲良くする。だってハムは悪くないし、大好きな子だし』 『ボ、ボクも……!』
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