第二十二章 霊媒師 岡村英海

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大福も、おはぎもコンちゃんも優しいな。 僕は2匹のやり取りを切ない思いで聞いていた。 と、ココでおはぎは声を潜め、丸いまま、うにうにコンちゃんに近付いた。 そして、 『ねぇ、コンちゃん。コンちゃんの主さんは、コンちゃんのコト忘れないと思う?』 爆弾質問だ。 聞かれたコンちゃんは動揺したけど、それでも、力強くこう言った。 『だ、大丈夫だと思う。だってずっと一緒だったもん。ボクは蛇で、中には怖いって言う人もいたけど、お父さんはボクのコト可愛い可愛いって言ってくれた。いっぱい大事にしてもらったから平均寿命より長く生きたし。だから絶対、ボクのコト忘れたりしないよ。信じてる』 ああ……コンちゃんと飼い主さんの絆を感じるよ。 平均寿命より長く生きたと言っていたけど、それだけ大事にされたんだろな。 飼い主さんは健康管理はもちろんだけど、ストレスを与えないよう、毎日楽しく過ごせるように、愛情を持って努力を重ねてきたのだろう。 『へ、へにゃ……? ヘイキンジュミョウ? コ、コンちゃんってムズカシイコトバを知ってるんだね、すごいや。そか……コンちゃんは主さんと一緒にいた時間が長いのか、そか……そか……じゃあきっとダイジョウブだにゃ……いいなぁ、うらやましいなぁ……おはぎは……もしかしたら忘れられてるかもしれないよ』 ああ……そうか、この所、おはぎは考え込んでいた。 僕はそれを寂しさが原因だと思っていたんだ。 そうじゃなかった、寂しさもあるだろうけど心配だったんだ。 自分ももし、忘れられたらどうしようと、不安に思っていたんだ。 『そ、そんなコトない! 主さんがおはぎを忘れる訳ないよ! だってスゴイ優しいんでしょ? 猫好きなんでしょ? おはぎの他にもシャチやサン、しらたまにくろたまにキジ3兄弟もいるじゃない! それだけ猫が大好きなんだ、だからみんなのコトも忘れないし、絶対に迎えに来てくれるよ……!』 控え目なコンちゃんが声を大にそう言うも、おはぎはシュルルと小さくなって、 『そ、そうかな……でも、でも、兄ちゃんや姉ちゃんは長生きで、その分、トウとカアと長い時間一緒にいたから忘れないと思うけど、おはぎは2才で死んじゃったの。ちょっとしかいなかったから忘れちゃったかも……』 もう半べそだ。 『おはぎ……だいじょうぶ、だいじょうぶだよ』 『ん……でもやっぱり心配だよ。大事にしてもらったけど、トウもカアも優しかったけど、小雪のコトがあったから、怖くなっちゃって、だから、だから……グズ……グズグズ……へ……へにゃぁぁぁぁん』 とうとうおはぎが泣き出して、コンちゃんは大慌てで小さな猫に巻き付いた。 優しくふわりと包むように、尻尾の先はおはぎの背中を一生懸命さすってる。 『おはぎ、おはぎ、泣かないで、ああ、どうしよう、』
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