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コンちゃんと内緒の話をした次の日。
現世に行きたいサビ猫に、早々チャンスがやってきた。
昨日の晩。
おはぎは何度も目を覚まし、モゾモゾと寝返りばかりを打っていた。
自分の尻尾を霊体に巻き付け、時々小さくため息をつき、なんとかして眠ろうと、目を閉じてジッとするけどウトウトしては目を覚ますの繰り返し……結局、明け方までそんな調子だった。
数えきれない寝返りのあと、とうとうおはぎは眠る事を諦めて、ムクッと起き出しそっとオウチを抜け出した。
朝もやの丘の道。
そこをテテテと下って行けば、おはぎには慣れた場所、虹の広場に辿り着く。
そこでおはぎは小川に流れる綺麗なお水をたらふく飲んで、口のまわりをビシャビシャにした。
『ぷはぁ、おいしー』
ちょっぴり眠そうな顔をして、だけどお水に大満足の小さな猫は、グルリと広場を視渡した。
もしかして……コンちゃんを探しているのかな?
パッと視、ニンジン色の長い霊体は視つからなくて、その代わり、妙な空気に気が付いた。
早朝の虹の広場は、動物達も昼間に比べてやや少ない、……が、その数少ない動物達の様子がおかしいのだ。
いつもみたいな、のんびりまったり和やかムード……ではなく、どこかしんみりと、どこか落ち着きがなく、いる者達はあれやこれやと言葉を交わしていた。
____ついこの間、小雪が行ったばかりなのに……
____今度は犬みたい……
____主さん来たけど連れて帰ってくれなかったんだって……
____どうして……ひどい……
____私達でなにかしてあげられる事はないのかな……
切れ切れに聞こえてくる動物達の囁くような小さな声。
それらを繋いで推測すれば、今度は犬の子が現世に送られるようだった。
飼い主さんは虹の広場まで来たと言っていたよな……なのにどうして連れて帰らなかったんだろう?
やはりご病気かなにかで犬の子を忘れてしまったのだろうか?
だとしたら……切ないな。
なんとも言えない気持ちになった。
同時、おはぎの事が心配になる。
大福の一件から日が浅い、立て続けにこんな話を聞いてしまって、ショックが大きいのではないだろうか。
「おはぎ……」
変えられない過去の出来事。
今、僕が視ているこの世界は、霊視によって視ているもので、声をかけても過去のおはぎに届かない。
わかっちゃいるけど、声をかけずにはいられなかった。
2才の仔猫がどんなに不安を感じているのか、思うだけで僕の方が泣きそうだった。
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