第二十二章 霊媒師 岡村英海

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『ごめんね、そんな顔させてごめんね、でもありがとね、コンちゃん大好き、絶対絶対帰ってくるからね……!』 『うん! それとコレを持っていって。ボクのウロコ。これを使えばちょっとだけ変身出来るの、霊体(からだ)をね、大きく視せる事が出来るんだ。もしも現世で悪い霊に捕まりそうになったら、大きくなってビックリさせて、その間に逃げればいいよ。だけど注意して、大きくなるだけで強くなる訳じゃないから』 コンちゃんは言いながら、長い霊体(からだ)を大きく1回波打たせ、ニンジン色にキラキラ輝く小さなウロコを、おはぎに投げて3枚寄越した。 『わぁ……キレイ……ありがと、これがあればダイジョウブだね!』 『うん、本当に気を付けてよ……あっ! ココ! この部屋だよ!』 キキキー! 2匹同時にブレーキをかけ、部屋の前で急停止。 コンちゃんは赤いおめめをウルウルさせておはぎを視送る。 おはぎは最後にお礼を言うと、前足で器用にドアを小さく開けた。 開けた途端、ガショーンガショーンと大音量の機械音が漏れてきて、同時、 『それでは、そろそろ出発しますよー! 用意はいいですかぁ? レディ……ゴー!』 と、誰かの声が部屋全体から聞こえてきたの。 ____直後 赤色の巨大な何かが突如現れたのだが……え……? ナニコレ、矢印みたいな形をしてる、え? なんで矢印? これって乗り物? ちょ、ナニ? なんなのコレーーーー!? 僕の頭は疑問符で埋め尽くされたが、そんなコトはお構いなしで、 ゴウッ!! ”矢印” は、爆音と共に宙を飛ぶ。 形は謎だがあれはきっと、現世に行く為の乗り物なんだ、そう思ったのはどうやらおはぎも同じみたいで、瞬間、それに向かって猫は走り、四肢を広げて飛びつくと ”矢印” の端っこに爪を立ててしがみ付く。 小さな猫は ”にゃばばばばば!!” となりつつも、現世まで落とされないよう必死に抱き着き続けたのだ。
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