第二十二章 霊媒師 岡村英海

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… …… ……ば…… ………………ばば…… ……………………ばばば…… ばばばば…………………ばばばばb 『にゃばばばばばばばばばばばばばばばば!!』 ゴウゥゥゥン!! ←謎の ”矢印” が減速しだした音、 プッシューーーーーー!! ←同じく ”矢印” が停止した音、 『へにゃーーーーーーーーん!!!』←おはぎ絶叫、 ポテッ、←おはぎ頑張った、だけど限界、”矢印”から落ちた、 あぁっ!! おはぎっ!! ダイジョブかーーー!? ←僕の絶叫3点セット、 長い長いトンネルのような一本道。 薄暗く視界もすこぶる悪い中、謎の赤い ”矢印” は、”虹の橋のふもと” から現世まで休み事なく一気に飛んだ。 時間にすれはおそらく数分なんだけど、 ”矢印” に爪だけでしがみついてたおはぎにしたら、その数分は数時間に匹敵したに違いない。 ”矢印” からポテッと落ちた小さな猫は、地面に可愛いオシリをつけてへたり込んでいた。 視た感じ疲労感は否めないが、とりあえず大きなケガはなさそうだ。 良かったーーー! で、 ”矢印” はというと。 宙に浮いてゆっくりと、180度クルリと回り、ゴウッ! と短く最後に鳴らして霧のように姿を消した。 同時、トンネルもどきが飛散して、代わり、辺りは明るくなって、人工的な建物やら道路やらが現れた。 ココは……現世だよな……場所は……地域は分からないけど……神社だ。 すぐ目の前には大きな赤い鳥居があって、足元には石畳の参道が、参道脇には手水舎が、それらを囲む背の高い針葉樹は瑞々しい葉を茂らせている。 そういえば、大福に初めて会ったのも神社だったよな……と、一瞬思い出に浸ったものの、おはぎの不安そうなか細い声に引き戻された。 小さな猫はいまだ地面にへたり込み、まわりをキョロキョロ視渡して、 『……へ、へにゃ……現世……着いたの……だ、だけど……ココ……どこ……?』 今にも泣き出しそうに顔を歪めていた。 ああ……そうだよな、岡村家の歴代の猫達は完全室内飼いを徹底してきた。 ゆえに外の世界を知らないのだ。 いきなり外に放り出されて、おはぎは怖そうに震えてる。 かわいそうに……出来る事なら今すぐ抱っこで保護してあげたい。 だけどココは過去の世界でそれがどうにも叶わないんだ、おはぎ……ごめんね…… それにしても……ココは一体どこなんだろう? 神社であるのは間違いないけど、知らない神社だ。 鳥居はけっこう大きいけれど、本殿までの距離は短め、参拝者はほとんどいない。 どこかの地元の小さな神社……なのだろうけど、ココから岡村家までどのくらいの距離があるのか見当がつかない。 …… ………… おはぎはグズグズ鼻をすすっていた。 それでもなんとか立ち上がり、歩きだそうと片足上げて、だけど動けずそのまま降ろして石のように固まった。 それを何度も繰り返す、繰り返すたび肩がプルプル震え出す。 『へ……へにゃ……ドッチに行けはいいの……? トウとカアはどこにいるの……? わかんない……わかんないよぉ……』
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