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現世に着いて早々、迷子の猫は途方に暮れた。
少なすぎる参拝者がおはぎの横を過ぎるけど、生者の目には幽霊猫の姿は視えず、誰一人気が付かない。
気付いたとして、おはぎは猫の仔だ。
人と言葉が通じないから、迷子だと訴えたって解決には至らない。
『……ヒック……グズグズ……トウ……カア……どこぉ……? 兄ちゃん……姉ちゃん……コンちゃん……小雪……おはぎはどこに行けばいいのぉ……?』
ああ……とうとう泣き出してしまった。
無理もない、こんなの人の僕でも心細いよ。
視てると辛くて悲しくてやりきれない気持ちになる、……だが、リアルのおはぎは今現在岡村家にいるのだ。
それはすなわちココから逆転、頑張って家まで辿り着いたという事で、それがどういう手段だったのか、僕は気になりひたすら猫を視守った。
ひとしきり泣いたおはぎは、小さなアンヨで顔を洗って涙を拭いた。
そして、
『おはぎ……がんばるよ、トウとカアにあうの』
そう独り言ちると鳥居を視上げ、たぶんきっと当てずっぽうに小さな一歩を踏み出した。
方向なんて分からないのに、それでも前に進むおはぎは、なかなかどうして強い仔だ。
そんなおはぎを心配半分、頼もしさ半分で、僕は後ろを着いて行く。
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