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雷神号は警察犬。
そう説明されたとて、仔猫のおはぎはあんまり意味が分かってない。
それでも、
『おはぎ……ムズカシイコトは分かんないけど、らいちゃんは強くて優しいの、……とゆーコトは、ケイサツケンってすごいんだね、らいちゃんカッコイイね!』
と、そう遠くない答えに行き着いた。
そして犬の警察官は迷子の猫の質問責めにあうのだが……
『えぇ! 現世送りになった犬さんって、らいちゃんのコトだったの!?』
おはぎがガチで驚いてる。
え、うそ、こんだけヒント出まくってたのに気づかなかったの?
そんなおはぎに僕がびっくりだよ。
『でもでも、現世までトンネル通ってきたけど、らいちゃんいなかったよ、どこにいたの?』
その答えは単純だった。
宙を飛ぶ赤い ”矢印” 、通常はアレの後ろを歩くなり走るなりして着いて行き、現世までの道案内をしてもらうだという。
だが、50メートルを6秒ジャストで走る雷神号にとって、”矢印” はアクビが出るほど遅かった。
最初の説明で、道は真っすぐ1本だと聞いていたので、とっとと走って先に現世に行ったんだって。
なるほど、それで姿が視えなかったのね……って、それよりもあの”矢印”、乗り物じゃなかったんだ、やたらと巨大なナビゲーションだったんだ。
『へにゃー、らいちゃんスゴイねぇ、足早いんだねぇ。おはぎは走るの遅いからうらやましいよ』
あー、うん。
確かにおはぎは遅いよね。
でもいいよ、可愛いから遅くたって問題ないよ。
こんな感じで次々飛び出すおはぎの質問。
子供だから言うコトがいちいちカワイイ。
それに対して雷神号もいちいち真面目に返すんだ。
なんだろ、この2匹って意外と気が合うんじゃないの? ……なんて思っていたのに。
おはぎの次の質問は、聞いてる僕がヒヤヒヤするよなデリケートな内容だった。
それが……
『らいちゃんは、どうして現世送りになったの……? 広場でみんなが言ってたんだ。犬の主さんは虹の国まで来たのに、犬さんを連れて帰らなかったって。……もしかして、小雪の主さんみたいに、らいちゃんの事を忘れちゃったの……?』
これだった。
聞いてるおはぎは口をへの字に泣きそうな顔をしていた。
悪気があって聞いたのではないのだろう。
小雪の事があって、自分もそれで心配になって、だから思わず聞いてしまったのだ。
聞かれた犬の子、雷神号は表情を崩さなかった。
顔を下げて真っすぐにおはぎを視つめ、そして、静かに話し出したんだ。
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