2366人が本棚に入れています
本棚に追加
……
…………
泣き虫猫は黙ったまんま、涙をボタボタたらしてる。
雷神号は目を細めると、ただただ黙って自分を視上げる猫の頭を、黒い鼻で優しく撫ぜた。
そして……
『私の為に泣いてくれるのか……? おはぎは優しいな。だが泣かなくて良いのだよ。主は私を忘れない。生まれ変わっても、今と姿が変わっても、それでも忘れない。今すぐではないけれど、必ず迎えに来てくれる』
そう言った雷神号に疑心の念は感じない。
目は穏やかで澄み切っている。
澄んだ目は小さな猫もおんなじだ。
おはぎは子供で純粋だから、”嬉しい” とか ”怖い” とか、感情が、大人よりも剥き出になる。
『……グズ……グズグズ……ら、らいちゃんは……それでいいの? 迎えに来てくれるって、主さんは言ったかもしれないけど……ニンゲンの命は動物よりもうんと長いよ、長すぎて、その間に忘れちゃうかもしれないよ、……そうなったら……らいちゃん、きっと泣いちゃうよ、』
『おはぎ……』
不安な顔はますます陰りが強くなる。
雷神号はそんなおはぎをゴツイ前足で抱き寄せた。
『私を心配してくれるのか……ありがとう。だが心配には至らない、なぜなら____』
犬の子は言いかけて、ここで一旦言葉を止めた。
猫の仔をじっと視て、少し考え、再び話を始めたのだが……
『心配しなくて大丈夫。どうしてかって? それはね、私と主の昔からの約束だからだ。主が私に ”待て” と言ったら、なにがあっても待つのが約束。次に主が ”良し” と言うまで大人しく待つんだよ』
雷神号……言葉のチョイスがガラリと変わった。
言葉はいたってシンプルで、小さな仔でもこれならきっと分かりやすい。
『……約束……?』
最初のコメントを投稿しよう!