第二十二章 霊媒師 岡村英海

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話をぜんぶ聞き終えて、ベソかき猫はしばらく考え込んでいた……が、おはぎの為に噛み砕かれた、雷神号の優しい言葉に感じるものがあったみたいで、 『……おはぎも信じる、』 一言だけど、泣かないでそう言ったんだ。 それを聞いた雷神号は『ありがとう』と小さく呟きおはぎを撫ぜた。 撫ぜてもらっておはぎはなんだか嬉しそう。 2匹はピタッとくっついて、顔を寄せ合いニコニコ笑う。 ああ……もう、もうさ。 猫も、犬も、両方とも可愛いや。 この子達は純粋で、あまりにも愛情深くて、打算も嘘もなんにもなくて、ただただひたすら愛してくれる。 なんてありがたい事だろう、なんて尊い事だろう、なんて愛しい存在だろう。 この子達と家族になれた僕達は、なんて幸せなんだろう。 …… ………… ……………… それから少しして、雷神号がこんなコトを言い出した。 『ところでおはぎ、私からもいくつか聞いてもいいかな?』 おはぎに質問? なんだろな、なにを聞くのかな? 首を傾げた猫の隣で、僕も一緒に首を傾げて聞いてると……その質問はおはぎを大いに焦らせたのだ。 雷神号の質問はこうだった。 『おはぎは私が使ったトンネルを通って現世に来たと言っていたけど、……虹の国の許可は取ってあるのかい?』 ____へ、へにゃ……! そ、そ、それは…… 『なるほど、無許可か。おはぎは今朝方、広場で現世送りの犬がいると聞き、その情報を元にコッソリ施設に忍び込んだ……と、推理したのだけど合ってるかな?』 ____へ、へ、へにゃ……!! えと……その…… 『ふむ、どうやら合ってるみたいだな。しかし……よく部屋を視つけたね。施設は広くて、現世転送装置のある部屋を探し出すのは難しいと思うのだが』 ____へ、へ、へ、へにゃ……!!! お、おはぎ、教えてもらってないにゃ、コンちゃんに聞いたんじゃないにゃ……! 『コンちゃん? ああ……なるほどなるほど、協力者がいたのか。そのコンちゃんというのは、おはぎのお友達なのかい?』 ____へにゃ? うん! コンちゃんはおはぎの仲良しなんだにゃ、ニンジン色のヘビちゃんで、広場で一緒に ”ヘビごっこ” をするんだにゃ、 『ほほー、楽しそうな遊びだねぇ。それで……と、そのコンちゃんが部屋の場所を知っていて、おはぎを連れてってくれたのかな?』 ____へにゃー! にゃばばばばばばばb! ちがうにゃ! コンちゃんが教えてくれたんじゃないにゃ! 連れてってもらってないにゃーーーー!! しどろもどろのサビ猫は、肉球に大汗かいて、尻尾はブワッとタヌキみたいに膨れてる。 むぅ……どうやら、おはぎ的には内緒にしたくて、どうにかこうにか誤魔化そうとしたようだけど、ウソがつけずにバレバレ状態。 雷神号が堪え切れずに笑い出すまで、そう時間はかからなかったのだ。
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