2366人が本棚に入れています
本棚に追加
無許可で現世に来ちゃった猫は、めちゃくちゃ頑張り誤魔化そうとしたけれど(あくまでも ”おはぎ比“ です)、テンパりすぎてぜんぶバレバレ。
そんなおはぎに雷神号は耐えられず、お腹を抱えて大笑いをしたのだが、そこはやっぱり警察犬。
そこまでするには何か事情があるのだろうと、おはぎから、うまく話を聞き出してくれた。
強くて優しい雷神号に、おはぎはすっかり懐いてしまった。
どうして現世に来たかったのか、そう聞かれ、仔猫は不安な胸の内をすべて吐き出した。
人間のトウとカアが大好きだったコト。
毎日が幸せだったコト。
だけど病気で、2才で死んでしまったコト。
そして……虹の国に住み始めてうんと時間が経ってから。
時期をずらして岡村家の猫達がやってきた。
兄弟たちに初めて会った時、おはぎは跳ねて喜んだそうだ。
自分とおんなじ、トウとカアの子供達。
ひとネッコ(一人っ子)だと思っていたのに、優しい姉と兄がいて、一緒に暮らせば毎日楽しい、……楽しいんだけど、
たまに、寂しさを感じる事があったのだそうだ。
丘の上の木の家で、夜にみんなでおしゃべりする時。
大好きなトウとカアの話になる。
それぞれが、生きてた頃の思い出話をするのだけれど、おはぎだけ、思い出の数が少ない。
その理由はおはぎだって分かってる。
兄弟たちは自分よりも後に生まれたはずなのに、みんな大きい成猫で、2年で死んだおはぎと違う。
揃って全ニャン長生きで、トウとカアと長い間一緒にいれた。
だからその分、思い出が多いのだ。
言っても仕方がない、言ったら困らせる。
だから誰にも言わないで、いつか、トウとカアが迎えに来たら、そしたらそこから新しい思い出を作るんだと、……そう、思い続けてきたのだ。
それなのに……視てしまった。
大福が……いや、小雪ちゃんが、ずっと待ってた主さんに、存在ごと忘れられてしまった所を。
それからおはぎは不安になった。
不安どころのレベルじゃない、恐怖すら感じていた。
トウとカアが迎えに来ても、覚えているのは兄弟たちだけ。
自分は1匹、置いていかれるのではないかと、そう考えると怖くて不安でたまらなくって、居ても立っても居られなくなった。
最初のコメントを投稿しよう!