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話の途中の雷神号におはぎが振り向く。
そして……
『お、おはぎのオウチ……? んと……んと……それがね、どこだか分かんないの』
恥ずかしそうにおはぎが言った。
それを聞いた雷神号は、警察犬にあるまじきお間抜けな顔で……
『……へ?』
と一言固まった。
『えへ、……えへへへ、あのね、おはぎね、ここがどこだか分からないし、オウチの場所も分からなくて、……だから、とりあえず真っすぐ行ってみようかにゃって思ってて……』
おはぎはますます恥ずかしそうにモジモジしだす。
犬の警察官は呆気にとられ、迷子の猫に半ギレで近付いた。
『なにを言ってるんだ! 現世は広いんだぞ! そんな当てずっぽうで家に帰れる訳がないだろう! 危険だ……危険すぎる……ああ……こういう子供は手厚い保護が必要だ……!』
あ、雷神号、僕と同意見じゃないですか。
なんて思っていると、警察犬は黒い鼻を迷子に寄せてフゴフゴ匂いを嗅ぎだしたんだ。
『へにゃ! へにゃはははは! くすぐったいにゃー!』
お気楽迷子が、身を捩ってゲラゲラ笑った数十秒後。
『よし、これで匂いは覚えた。あとは探しだすだけだ。おはぎ、私が家まで送るから一緒に行くぞ』
”キリリ” どころじゃない。
捜索モードに切り替わった警察犬は、ドキッとするほど精悍な顔つきだ(ヤバイ、僕が惚れそう)。
『へにゃ! らいちゃん、おはぎのオウチ知ってるの!? すごいにゃー!』
チガウ、そうじゃない。
思わず笑ってしまったけれど……そうか……そうだったんだ。
雷神号がおはぎを送ってくれたんだ。
もし、この出会いがなかったら、おはぎは今でも迷子のままであっただろう。
ああもう……!
感謝してもし足りない、本当に本当にありがとーーー!
『おはぎ、私の背中に乗れ』
優秀過ぎる警察犬は迷子を軽々背中に乗せて、覚えた匂いを手掛かりに歩き出した……3日後。
とうとうやった、やり遂げた。
雷神号は、海がキレイで大仏が有名な、K県K市にある岡村家を探し当ててくれたのだ!(雷神号すっごーーーい!)。
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