第二十二章 霊媒師 岡村英海

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そういえば大福も着いて早々、ミッションクリアしたって言ってたな。 なんせ最初に出会ったのが猫廃人の僕だったからねぇ。 お姫の魅力にノックアウトでフォーリンラブ。 その日のうちに部屋に招いて、そのまま甘い同居生活。 僕は世界一幸せだ。 脳内で100万回は再生している最初の出会い。 またもやオートで再生しかけた僕だったが、雷神号の渋い声に中断された。 『いや、待ってください。私が現世に到着したのは3日前。ミッションクリアの連絡をいただいたのは今さっき。という事は、大幅な記録更新ではないですよね。同じ3日で同率なのではないですか? それなのに表彰される訳にはいきませんよ』 おっふ。 さすが警察犬、真面目だ。 なんて思っていると、天からの謎の声がそれに答えた。 【いいえ、同率ではないですよ。連絡をしたのは今ですが、ミッションは3日前にクリアしてましたから。着いて早々助けてあげたでしょう? 雷神号さんの現世行きにこっそり紛れて、無 許 可 で 現世に行っちゃった、岡村家の末っ子を】 シン………… あ、犬も猫も固まった。 何かを言いかけた口のまま黙っちゃった雷神号と、ボワッボワに尻尾を膨らましてるおはぎ。 2匹は目を合わせてしばしの無言。 先に口を開いたのはおはぎの方だった。 とは言えコトバになってないけど。 『にゃばばばばばばばばb』 パニック寸前、テンパリ猫は、目の前の大きな犬にしがみ付く。 しがみつかれた雷神号は、 『ここは素直に罪を認めて自首しよう。そうすれば罪は軽くなる、』 と、本職ゆえにガチな助言をしてくれた。 おはぎは素直に頷いて、きっと、たぶん、ゴメンナサイをしようとしたと思うんだけど、それより先に、天から迫力の怒鳴り声が降ってきて…… 【フッシャーーーーー!! おはぎぃぃぃぃ!!】 ひぃ! 誰の声!? さっきまで聞こえてた、男のヒトの声じゃない。 怖そうな女性の声で、どこかで聞いた事がある……と思っていたが、その疑問はおはぎの叫びで解明された。 『へにゃーーーっ! サ、サン!』 アイター! この声サンかー! サンは三毛の熟女猫。 面倒視の良いお母さん的存在だけど怒るとコワイのだ。 【おはぎっ! あんた何してんのよ! なにも言わずに家を出て、そのまま帰ってこないなんて! 私達がどれだけ心配したか分かってるの!? フッシャーーーーー!!】 アウチ……フッシャー2回目、めちゃ怒ってる。 ま、当然っちゃー当然か。
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