第二十二章 霊媒師 岡村英海

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サンの怒りにおはぎは震えあがっていた。 ボワボワ尻尾を股に挟んで、おなかにたたんで隠してる。 『へ、へにゃ、サン、ゴメンナサイ、お、おはぎが悪かったにゃ、』 かろうじて言葉は出たけど、それに被せて割り込んだのは、こういう時に厄介な三兄弟だった。 【サン! オレもしゃべりたい! つめて! もっとつめて! しゃべる! オレもしゃべる! はにゃ! おはぎズルイぞ! オレ達もゲンセに行きたかったにゃ!】←茶々丸と思われる。 【ひにゃ! そうだぞ! ゲンセ行きたかったにゃ!】←キジ丸と思われる。 【ふにゃ! 今から行くにゃ!】←サバ丸と思われる。(てか来るな) あーもー取っ散らかってきた。 空気を読まないトラシリーズは好き勝手に騒ぎ放題。 さらにそこに、 【白菜ぜんぶあげるから早く帰っておいで!】とシャチが参戦。 そのすぐあとには、 【【おはぎがいないと寂しいよ】】とハモっているのは、しらたまとくろたまだ。 猫達は入れ代わり立ち代わり、次々おはぎに話しかけ、帰って来いと言っている。 みんな揃っておはぎを心配してるんだ。 怒られ猫は、最初こそ尻尾を挟んで震えあがっていたけれど、みんなの気持ちが分かったみたいで、素直にゴメンとあやまった。 そして、 【サン、トラの兄ちゃん達、シャチも、シロちゃんもクロちゃんも、心配かけてごめんね。おはぎ、ちゃんとみんなの所に帰るにゃ、……へにゃ……帰るんだけど、だけど……もうちょっとだけ現世にいたいの、】 今度はきちんとお願いしたんだ。 それを聞いた岡村家の猫達は、”なんで!?” と声を合わせてこう言った。 おはぎは……言い淀んでいた。 口の中でモゴモゴと、理由をはっきり言えなくて、ぐずりぐずりとやってたのだが……ここで雷神号が助け船を出した。 『おはぎは現世でやりたい事があるんだ。現世でなくては出来ない事で、それさえ叶えば、虹の国に戻ると言ってる。心配をかけたのに無理を言ってすまないが、もう少しだけ時間をくれないだろうか。もちろん、戻ったらぜんぶ話すつもりでいる。そうだよな? おはぎ』 『う、うん! ぜんぶ話すにゃ! だからもうちょっとだけ……現世にいたいにゃ』
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