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それから……夜まで眠り続けたおはぎは、もう1人の大好きな人、そう、父さんの声で目が覚めた。
「ただいまぁ、今日は疲れたよ。部長は怒ってばっかだし、部下は文句ばっかだし、はぁ……中間管理職は板挟みでやんなっちゃう」
帰って早々ぼやく父さん、……って、これはいつものコトだけど、この声におはぎはガバッと飛び起きた。
『トウの声だ! カイシャから帰ってきたんだ!』
シャカシャカシャカ!
なんて、そんな音が聞こえてきそうな勢いで、テレビ裏から飛び出たおはぎは、嬉々としてまとわりついた。
『トウ! トウ! おはぎだよ! おはぎが来たよ! おはぎのコト覚えてる!? おはぎのコト視える!?』
あ、既視感。
さっきとほぼほぼおんなじだ。
おはぎにとって、会いたくて甘えたくてたまらなかった人(2人目)に四肢を広げて飛び付いた……が、スルンとすり抜け、やはりそれは叶わなかった。
『……なんで……? なんで……?』
床に突っ伏しスライム状態。
疑問符をダーズで頭に浮かべるおはぎは……悔しそうに独り言ちていた。
”なんで?” ……か、そうだよね、そう思うよね。
こんなに近くにいるというのに、父さん達は気づいてくれない。
おはぎからは視えるのに、声だって聞こえるのに、その逆はダメなんだ。
これが……死者と生者の壁なんだな。
霊媒師をしていると、その壁が曖昧になりがちだ。
僕は特にそうかもしれない。
本来は、霊力がなければ霊の姿は視えないし、声だって聞こえない。
霊がどんなに望んでも、”ここにいるよ” と伝える事すら難しいのだ。
おはぎは、きっとそういうの知らないのだろうな。
だってこの子は小さな子供で、ましてや猫だ。
知らなくて当たり前、……そうなんだけど、視てると辛くて切なくなるよ。
『なんで……? なんでにゃあ……?』
ああ……かわいそうに……あとで僕がなんとかするから、もう少しの辛抱だから、おはぎは霊で、父さん達は生人で、だから仕方がないんだよ。
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