第二十二章 霊媒師 岡村英海

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「「きなこっ! 良い所に来たー!」」 さすがは夫婦。 パーフェクトなハモリっぷりで、きなこをキャリーに入れようと連係プレーが始まった。 だがしかし、きなこの中では ”キャリー = 病院” の図式があるもんだから、ガチの本気で逃げまくる。 その間にもおはぎはドンドコうるさいし、もうなにがなにやらド修羅場と化したのだ。 『へにゃー!!(ドコドコドコドコ!!)』 ポ現マシン(おはぎです)がリビングを、右回りで走ってる。 「ほにゃー!!」訳:どこも痛くないにゃー! 病院嫌いはリビングを左回りで走ってる。 このままいくと鉢合わせになりそうな、……と思っていたら案の定。 ぐるっと回ってテレビの前でコンバンハ! 『へにゃー!!』←ビックリしちゃって垂直に高く飛ぶおはぎ。 「ほんぎゃー!!」←もっとビックリ、耳ペタンで床に伏せたきなこ。 …… ………… あ……2匹とも固まった。 初代アイドルと9代目アイドルのご対面、ど、どうなる? 『お、おまいは誰だにゃ、』 ふわふわ毛皮をボワッとさせて、おずおずとおはぎが聞いた。 「ほ、ほにゃにゃ……!」訳:あんたこそ誰にゃ、 つややか毛皮を爆発させて、耳ペタンはそのままにきなこが聞いた。 質問に質問で答えるパターンだな。 『お、おはぎはおはぎだにゃ。トウとカアの子供だにゃ。おまい……おはぎが視えるの?』 あはは、おはぎは一人称が ”おはぎ” だからねぇ。 ややこしい自己紹介だ。 「ほにゃ? ほにゃにゃにゃにゃ」訳:視えるけど? んで、トウとカアの子供? じゃあ新しく来た子なの? さすが霊力(ちから)持ちの猫、視えるのね。 そんでもって、ま、きなこにしたってお前誰だと思うよね、でも少し良い感じ。 子供と聞いて、警戒心がほんのちょっぴり解けたっぽいぞ。 『おまいは視えるのか! うぬぬ……なんでにゃ……? それよかちがうにゃ、新しくないにゃ、古いにゃ』 おはぎは約30年前の初代だもん、そりゃ古いわ。 「ほにゃ? にゃにゃにゃ?」訳:えぇ? ウチには私しかいないけど? あ……と、そうなんだけど、でもね。 それから2匹は中々前に進まない会話を延々と繰り返し、その間は当然音が鳴りやんだのだが……
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