第二十二章 霊媒師 岡村英海

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「め、めぐちゃん、音が止まったね」 「ひ、ひろくん、止まったわね」 父さん達は辺りをキョロキョロ伺いながら、小さな声で言い合った。 そしてこうも続ける。 「音は止んだけど……めぐちゃん、きなこの様子が変じゃない?」 「うん、変よね。さっきからずっと鳴いてる。あんまり鳴く子じゃないのに……それと……あの鳴き方、まるで誰かと話してるみたい、」 おっとまたもや正解。 テレビの前では初代と9代目、夢の対談真っ最中で、ある意味すごく盛り上がってるのよね。 父さん達が訝し気にきなこを見る中、猫達の話はまだまだ終わらず……だったのだが、ここでひとつ、やっかいな事が起きたのだ。 『だから! おはぎはうんと前にココにいたんだにゃ! 今はもう死んじゃって、虹の国にいるんだにゃ! サンもシャチもシロちゃんもクロちゃんもキジの兄ちゃん達もいるんだにゃ!』 「ほにゃ……?」訳:よくわかんない…… んもー! なかなか分かってもらえなくって、おはぎはイライラ、癇癪を起こしてしまった。 そして、 『とにかくだにゃ、トウとカアに気づいてもらわないといけないんだにゃ。おはぎは長く現世(こっち)にいられないの! いいトコまできてるにゃ、もうちょっとで気づいてもらえるにゃ、だからあとは……コレを使うにゃ!』 ジャジャーン! とばかりに取り出したるは、ニンジン色のキラキラウロコ。 コンちゃんからもらった3枚中の1枚だ。 おはぎはそれをパクッと口に放り込み、ゴクンと飲んで約10秒。 ゴゴゴ……ゴゴゴゴゴゴ……! みるみるウチにおはぎの霊体(からだ)は大きくなって、頭が天井に着きそうだった。 「ほんぎゃー!!!」 それを視た9代目アイドルは驚くなんてもんじゃない。 つやつや毛皮が大爆発、きなこは一目散に2階へ逃げた。 残されたおはぎは(第二形態)というと、今 ”へびごっこ” をしたら絶対優勝間違いなしな、巨大な霊体(からだ)でドンドコドンドコ床を鳴らしまくっているのだが、大きい分だけ音量が跳ね上がる。 『トウ! カア! これなら聞こえる? おはぎはココにいるよ! 気がついてー!』 一生懸命床を打ち、気づいてほしくて頑張るおはぎ。 だがしかし、しかしである。 おはぎの頑張りは報われず、音にびびった ”めぐちゃん” と ”ひろくん” は、シッカリ手を取り合うと、ダッシュで2階へ逃げてしまったのだ。
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