第二十二章 霊媒師 岡村英海

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追い詰められてはいるのだが、どうしていいか分からない。 そんな2人と1匹は、ビクビクしながら数日を過ごしていたのだが…… 二週間目、おはぎがリモコン落下を成功させて、さらには時間はかかるものの2階に上がる事も成功させた。 さらにさらに、僕の部屋のドアを開ける事も成功。 ドアに関しては、薄く開けてある事が多いがゆえ(僕の部屋で昼寝をしたがるきなこの為に)、そこにドンドコ振動が加わって偶然開いただけなのだが……なんてったって古い家だ。 ギギギ……ギギギ……と、不気味サウンドを鳴り響かせたのである。 で……このあたりで、父さんと母さんに温度差が生まれた。 おはぎが音をさせるのは起きてる間だけ。 眠くなって寝落ちをすれば、当然その間音がやむ。 たっぷり眠ってパチッと起きて、フル充電で新たにドンドコ始めるのだが、猫という生き物は1日24時間中、平均して15~17時間前後眠る。 これは生きてる猫もそうでない猫もおんなじだ(大福も隙あらば眠るしね)。 この猫のオネンネサイクルが……温度差を生んだんだ。 父さんは会社員。 平日の月曜から金曜は朝から晩まで会社に出勤。 二週間目のその週は、トラブルがあり土曜は会社に呼び出され、日曜は泥のように眠ってた。 対し母さんは週に数回パート勤務、午前のみとか午後のみとか、短時間の出勤だ。 家にいる時間は圧倒的に母さんの方が長い。 ゆえに、当たり前っちゃー当たり前だが、母さんの方がドンドコをより多く聞く事になるのだ。 おはぎの寝落ちはランダムだし、ましてや慣れない現世、慣れない第二形態で、一度寝たらスヤッスヤ。 タイミングが良いのか悪いのか、……母さん的には悪いのかもしれないが、父さんが家にいる間、いや、正確には家にいて起きてる間、ピタッと音が止んだのだ(ネッコ熟睡)。 「めぐちゃん、最近音しないね。アレ、なんだったんだろ? 家が古いからガタガタいってたのかなぁ。最初はオバケかなって思ったけど、気のせいだったのかも。それよか今日も疲れたぁ。ごめんだけどもう寝るね」 言いながら父さんは、ヨロヨロしながら2階で就寝。 1度寝たら朝まで起きない深い眠りで、その後始まるドンドコに気がつかない……岡村大海(ひろみ)56才、性格は保守的で慎重派。 会社では上司と部下との板挟み、中間管理職だ。 苦労も多い立ち位置は、”切り替えの早さ” というスキルを習得させた。 どうも今回、そのスキルが発動されたみたいだ。 そんなこんなで母さんは、 「ちょっとぉ! 気のせいじゃないわよぉ! 先週ひろくんだって聞いたじゃないぃ! 昼間は音してるのよ! 夜だってしてるけど、ひろくん寝ちゃって気がつかないだけ! 本当よ! やだ寝ないで! 起きてよー!」 と……岡村めぐみ52才。 1人取り残されてしまったのだ。
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