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三週間目前半。
母さんがキレた。
「ひ、ひろくんは寝ちゃうと朝まで起きないから、そ、それで気付かないんだわ……! 音、まだしてるのよ、リモコンも落ちるのよ、引きずるような音も、ドアが開く音もまだしてるし、きなこだって怖がってるの、きなこが病気になったらどーすんのよ……ひろくんだって前に一緒に聞いたじゃない、なのに……なのに…… ”あれは気のせいだったのかも” だなんて……うわぁぁぁぁん! 私の事信じてないのね? バカァァァ! 猫のウンチ踏んだらいいんだわぁぁぁ!」
子供のようにガン泣きで、この日もさっさと寝ようとする父さんに文句を言ったのだ。
当然父さんは大慌てだ。
「め、め、めぐちゃん、ごめん! 決して信じてない訳じゃなくてね、ほら、途中で僕には聞こえなくなっちゃったから、それで、その、えと、本当にごめん!」
あやまりながらティッシュをとって、母さんの涙を懸命に拭いているが、そんなもんでは泣き止まない。
てか父さん、僕がいないと一人称は ”僕” なんだ、知らなかったよ……って、そんなコトより父さんは、玉の汗をおでこに浮かべて続けて言った。
「もちろんめぐちゃんを信じるよ、当たり前じゃない! だって僕はめぐちゃんが大好きで、結婚した時一生大事にするって誓ったし、それは今でも変わらない! めぐちゃんもきなこも英海も僕にとって宝物だ! ごめんね、ごめんね、僕も最初に聞いたのに、途中から聞こえなくなっちゃったから軽く考えてたんだ。ああ、そんなに泣かないで、僕がなんとかするから!」
きゃー!
もうなにー!?
ひろくんってば、めぐちゃん超ラブじゃーん!
2人の息子は彼女すらいないのに、それどころか片想い真っ只中だというのに……ま、いいけど。
めぐちゃんを泣かしてしまったひろくんは、眠気が一気に吹っ飛んだ。
”なんとかする” と力強く言った後、飲みなれないコーヒーをがぶ飲みし、怒涛の勢いでパソコンを立ち上げた。
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