第二十二章 霊媒師 岡村英海

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ユリちゃんのメールを読んで、おくりびに依頼すると決めた、……のだが、ここで更なる奇跡が起きた。 父さん達は、ウチにいるどの手練れ霊媒師よりも、ホームページの霊媒師紹介欄で見た【猫好きエイミー】を指名したのだ(まさかその ”エイミー” が自分達の息子だなんて夢にも思わず……なんだけどね)。 いろいろアレではあるけれど(アレってなんだ?)、霊媒師を依頼した事で、2人は、特に母さんは気持ちが少し楽になり、おはぎのドンドコウルサイ音も、あと少しの辛抱だと耐えていた。 ちなみに父さんは、改めて音を聞いて、”気のせいじゃなかったよ!” と、謎現象を再確認したみたい。 てか、”めぐちゃん超ラブ” な、あの調子じゃあ、たとえ音が聞こえなくても、霊媒師を呼んだだろうけどね。 一方おはぎはというと。 『へにゃぁ……音は聞こえてるみたいなんだけど、おはぎには気づいてくれないにゃ……らいちゃん……どうしたら良い……?』 現世(ここ)にはいない雷神号に、おはぎは弱気に質問するも、答える(もの)は誰もいない。 あとどのくらい現世にいられるのだろう? いつまでいられるか、帰る時はどうしたらいいのか、それはなんにも聞いていない。 もしかしたら、ある日突然 ”迎えに来たよ” と、雷神号が虹の国に帰ったみたいに、七色の風が吹くのかも……と、おはぎは気が気ではなかった。 今は帰りたくない。 だってまだ気づいてもらってないもの。 おはぎのコトを覚えているのか聞いていないし、大好きだって言われてないし、あと、出来る事なら抱っこやナデナデをしてほしい、思いっきり甘やかしてほしいのだ。 それから…… 『あの ”きなこ” とかいう猫。あの子もトウとカアの子供だったんだ。おはぎより大きいから、新しいお姉ちゃんなんだにゃ。仲良くしたいにゃ、毛繕いしてあげたいにゃ……なのに……怖がって逃げられちゃう、』 巨大な霊体(からだ)をくの字に曲げて、おはぎはズーンと落ち込んでいた。 そうだよね、おはぎは優しい仔だもの。 きなこを怖がらせるつもりはないのだ。 ただちょっと(かなり?)変化(へんげ)のおはぎが巨大すぎて、もともとビビリのきなこ姫は、怖がって逃げ出すようになってしまった。 無理もないよ、僕だって初めて視た時、びびったもん。 誤解が解けて仲良くなれたら良いんだけどな。
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