第二十二章 霊媒師 岡村英海

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さて、どうしたもんか……と考えていたのだが、このあと僕は、面白いモノというか、レアなモノというか、とにかくビックリするモノを視る事になるのだ。 それがなにかというと…… 「ほにゃにゃ!?(耳ピクピク)……ほにゃ……ほにゃ……ほんにゃー!!」 2階からきなこが下に降りてきて、リビングにいる母さんにまとわりついた。 「あらぁ、きなこ起きたのねぇ。だけどちょっと早いんじゃない? いつもならまだ寝てるのに……なにかあったの? また変な音がした? ……その割には怯えてないわねぇ。なんだか嬉しそう。きなこがゴキゲンだとカアも嬉しいわぁ、……(ピコーン!)もしかして……誰か来たのかしら、霊媒師さん? でもこの喜びようは、違うわね……これはもしかして……!」 カワユイきなこにデレデレし、だが途中、なにかに閃いた母さんは、スクっと立って玄関へと向かった。 その間きなこはニャーニャーと鳴きっぱなしで、立てた尻尾をプルプルと震わせている。 そんなきなこをひと撫でし、玄関でサンダルを引っかけた母さんは、そのままガチャリとドアを開けた。 開けたドアの向こう側。 そこには、 「あ……、」 スマホ片手に間抜けな声でこちらを見てる、数時間前の(・・・・・) ”僕” がいた。 口をポカンと開けたまま、黙ってその場に立ち尽くしているのだが…… 「あら、やっぱり英海だったのね! ウチの中できなこが二ャー二ャー騒ぎ出したからもしかして……って思ったのよ。あんた急にどうしたの? 連絡もしないで帰ってくるなんて珍しいわね。まぁいいわ。お腹空いてない? 入りなさい。何かつくってあげるわよ」 母さんは嬉しそうにそう言った。 そして、過去の ”僕” は、たっぷり時間をかけて、深呼吸を1回、2回した後に、 「母さん、僕…………、ああ、うん。いいや、後で話す。先に何か食べさせて」 言いながら、家の中に入ってきたのだった。
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