第二十二章 霊媒師 岡村英海

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うわ、なんだこれ。 僕がいる、霊視で視ている過去の世界に僕がいる。 浮かない顔してモグモグモグモグ、野菜たっぷり素麺を一心不乱で食べているよ。 おはぎの霊視で一周回って今ココで、そこに僕も登場だ。 途中から関わってるから、出てきたっておかしくないけど、だけどやっぱりすこぶる違和感。 や、ちょ、ヘンな感じ、めちゃくちゃヘンな感じぃ! …… ………… 長い霊視に少し疲れてちょっぴり休憩。 おはぎは2階で寝てるから(父さん達の部屋でスヤスヤしてる、きなこは僕の部屋)、リビングで過去の自分を視てたんだ。 僕と母さんのイマイチ噛み合わない会話とか、帰ってきた父さんとみんなでゴハンを食べるトコとか、ただひたすらに視てたんだけど…… これって、霊視って、飛ばして視たりは出来ないのかな? 動画みたいに再生バーを進めたり戻したり、そんなん出来たら超便利だと思うんだけど、その辺りが分からない。 なんてったって僕はビギナー、霊視は今日が初めてなのだ。 これも今度、先代に聞いてみよう。 なんてコトを考えてると…… ギシィ……ツ、ギシ……ギシ……ギシィ…… あ、来た……! リビングドアの向こうから、軋む音が聞こえてきた。 過去の僕はそれに気が付き鳥肌を立てている。 探るようにドアを見つめて、眉間にシワを寄せている。 音はだんだん大きくなって、 ギシィ……ギシィ……ズズ……ガンッ! ズズズズズ……ギシ…… ズズ……ギシィ……ガンッ! ズズズ……ギシィ……ガンッ! な、なんかすごいな。 ここまでスゴイ音だったっけ? ド派手な音が鳴りやまないよ。 今の僕は音の主を知っているから怖くはない。 怖くはないけど心配になってきた。 ちょっと様子を視に行くか。 リビングドアをすり抜けて、階段を下からヒョイと覗いてみれば……そこには巨大な黒い塊。 おはぎは悪戦苦闘でアセアセしながら、1段1段降りてくるトコだった。 『へ、へにゃにゃ……! ぶ、ぶつかるにゃ、もうチョットこっちに寄って……(ギシィ)にゃにゃ、イイ感じ、そしたら今度はこっち側に……(ズズズ……ガンッ!)イテッ! へ、へにゃぁ、オシリをぶつけたにゃ、イタイにゃ、うぅ……でも頑張る、ゴハンを食べるお部屋に行くんだにゃ、(ガンッ!)イッターイ!』 ああ……すっごい頑張ってる……!
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