第二十二章 霊媒師 岡村英海

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ズズズ……ガンッ! へにゃ! ズズズズ……ガガンッ! へっにゃー! ああもう、ココが過去じゃなかったら、今すぐ僕が助けるのに。 出来ないのがもどかしい、だからせめてと届かないけど応援したんだ。 ガンバレ! そこ! 右側ぶつかる! ああ! ダメ! もっとおなか引っ込めて! ファイィィッ! コンちゃんのキラキラウロコで大変身のサビ猫は、身長目測2メートル、横幅も相当でパッと視はお相撲さんだ。 暗色の斑模様、全身を焦げたような黒い煙が覆って……って、これホントは猫の毛だ。 仔猫特有細くてフワフワ、それが伸びて黒い煙に視えるだけ。 『へにゃぁ(ゴンッ!)、イタイにゃ、よいしょ、よいしょ……(ズズズ……ゴンッ!)」 ああ……頑張れ、あと少しで1階(した)に着くから頑張れ……! どうにかこうにか時間をかけて、おはぎは1階(した)に辿り着く。 ホッと胸を撫でおろし、ふと階段を視上げると、そこには目を真ん丸に見開いたきなこがいた。 きなこはおはぎを怖がって、だけど意を決したのか2階から転がるように駆け降りて、絶叫しながらリビングへと逃げ込んだ。 直後、 「「「きなこーーーーーーー!!」」」 岡村家の叫びのハモリが聞こえてさ、その後、過去の僕が廊下に出たと思ったら、 「なんだこりゃーーー!?」 おはぎを視て開口一発絶叫だ。 てかなにこれ……取っ散らかってる。 霊視を通して客観的に視ていると、突っ込みどころが満載だ。 過去の僕は巨大な異形にびびっているけど、そうじゃないフリをしちゃって瘦せ我慢。 おはぎは最初、僕が誰だか分からなかったみたいでさ、 『へにゃ! 誰だにゃ! トウにチョット似てるけどチガウにゃ! 弱そうなヤツだにゃ!』 初っ端から格下認定。 挙句の果てには僕を視て『……カ……カカ……カ……』と鳴いたんだ。 さっきは意味が分からなかった。 でもね、今ならワカル、これクラッキングだわ。 猫は元々ハンターだから、本能が掻き立てられると興奮しちゃって『カカカカカ』って鳴くのよね。 マジかー、僕、狩られるトコだったんじゃーん。
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