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キッチンで手を洗い、100均のビニール袋から紙皿やらを出そうとしていると、
「岡村さん、手伝います!」
シュシュで髪をまとめたユリちゃんがひょこっと顔を出した。
「ありがとう。でも大丈夫だよ。ケーキ切るだけだからすぐに終わる。ユリちゃんはみんなの所でお話しておいでよ」
こうやって家族が揃うのはきっとこれが最後だろう。
死者であるお父さんやお母さん、田所さんはそう遠くないうちに黄泉の国へと旅立たなくてはならない。
だけどユリちゃんは生者だ。
一緒に逝く事はできない。
この先彼女がうんと長生きしてお婆ちゃんになって大往生で亡くなるまで、再び家族に会う事は難しい。
先代に依頼すれば口寄せで呼び寄せる事もできるけど、その時は依頼という形になるだろうからお金もかかってしまう。
だからこそ、今この再会の場を大事にしてほしい。
僕なんかを手伝ってる時間がもったいないじゃないか。
「でも2人で用意した方が早いでしょう?」
ユリちゃんは話しながら手を動かし、買ってきた紙皿やペディナイフをサクサク開封してくれる。
確かに助かるけど、でもなぁ甘えちゃいかんよなぁなんて思っていると、
「ウチの爺ちゃんがごめんなさい」
ユリちゃんにいきなり謝られて僕はポカンとしてしまった。
「え?」
「だって! 岡村さんにはママがすごくお世話になったのに、馬鹿野郎なんてひどいもん。さっき爺ちゃん、ママに怒られてたからきっと岡村さんに謝ってくると思う。私からもごめんなさい」
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