第二十二章 霊媒師 岡村英海

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だけどその後、 「あ、あの、……僕はこの家の息子で岡村英海と申します、」 僕が挨拶した事で、 『へ……? ヒデミ……? ヒデミって……あのヒデミ? へにゃ……?(ジロジロジロ)にゃにゃにゃ! チ、チガウにゃ、ヒデミは赤ちゃんだにゃ、こんな大きいはずがないにゃ』 ほんのりと思い出し、だけど最後は別人判定。 おはぎの中ではいまだ ”僕 = 赤ん坊” の図式が成り立ち、30過ぎた大人の僕は ”ヒデミ” じゃないと着地したのだ。   で、ココでおはぎが急に固まり、僕の横の斜め下、そこを凝視でプルプル震え出したんだ。 なにを視てるんだろ……と思ったら大福だ。 そうか、この時すでにお姫の事を視てたのか。 この時お姫はなんでか霊体(からだ)を壁に隠して、カワユイ顔だけヒョコっと出してなにやら困った表情だ。 で、で、おはぎはというと。 『へにゃ……まさか……まさか……でも……あの顔……この匂い……』 かすかな声で独り言ち、少し黙ってそして、 『……キィ……キ…………キィ………………小雪ぃ』 今視れば、嬉しそうに ”小雪” と名を呼び、ギシッ!!! っと床を軋ませて、一瞬で間合いを詰めた。 『ななっ!!』 大福の慌てた声。 おはぎは姫にぶつかるように突進し、そのまま一緒に壁の中に消えてしまった。 で、で、で、我ながらガチ引きするよなテンパリぶりで、過去の僕は必死にお姫を呼んでいる。 ああ……この時は焦ったよ。 もしも姫になにかあったら、そう思ったら生きた心地がしなかった。 当の大福は、おはぎと一緒に父さん達の部屋にいたんだ。 そこで何をしてたのか、一体何を話していたのか、そこは僕の知らないトコロだ。 というコトで……せっかくの霊視だもの。 過去の僕は放っておいて、猫2匹が何を話していたのか……覗きにいっちゃうんだからねっ!
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