第二十二章 霊媒師 岡村英海

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頑張ったわね、そう言って巨大なおはぎをザーリザーリと毛繕いする大福姫。 ちょ、ウソでしょ? なんでアレで分かるのよ、事情説明、めちゃくちゃカタコトだったのにっ! 毛繕いが気持ち良くってウットリおめめを閉じてるおはぎ。 喉の奥からゴロゴロと低い音を響かせる。 てかさ、猫のゴロゴロ音って、型の古いストーブの(マッチで火を着けるヤツね)起動音に似ていない? そんな事をニヤニヤしながら考えてると、片目を薄く開けたおはぎがお姫に向かって言ったんだ。 『小雪、よくおはぎがおはぎだって分かったね。コンちゃんのウロコで変身したのに、こんなに大きくなったのに』 『分かるわよ。だって姿が変わっても、匂いはおはぎのままだもの』 『そっか、えへへ、』 『コンちゃんのウロコを使ったのもすぐに分かったわ。前にトラの仔三兄弟が使ってたのを視たコトがあるから』 『へにゃー、兄ちゃん達も大きくなったんだぁ。だけどスゴイよね、コンちゃんのウロコ! なんで変身出来るんだろ、不思議にゃー、オモシロイにゃー、でも動きにくいにゃー』 『それだけ大きくなれば慣れるまで動きにくいでしょうねぇ。それと、ウロコで変化(へんげ)が出来るのは、コンちゃんの飼い主(お父さん)が手品師だからじゃないかしら。あの子、不思議なアイテムいっぱい持ってるわよ』 『テジナシ? テジナシ……んー、よくわかんないけどカッコイイにゃ!』 へー! なるほどねぇ、コンちゃんのお父さんは手品師さんなんだ。 手品のタネで仔猫を巨大化させるなんて、スーパーミラクルイリュージョン! てか、他にも持ってる不思議アイテム。 僕はそれも気になっちゃうよ。 おはぎはすこぶるゴキゲンだった。 小雪小雪と大きな霊体(からだ)でまとわりついて離れようとしない。 ん……無理もないか。 だって、慣れない現世でイチニャンきりで、ずっとずっと頑張ってきたのだ。 寂しかっただろう、心細かっただろう、そしてもどかしかっただろう、……そんな苦しい状況で、大好きな小雪ちゃんに会えたんだ。 そりゃあ嬉しくなっちゃうよ。 それからおはぎは次から次へとひっきりなしに喋りだし、話したいコト、聞きたいコト、それらがいっぱいあるもんだから、さっきみたいなカタコト単語を量産してた。 おはぎは主に質問ばっかしてたんだけど、それに対する大福の回答集が素晴らしかったんだ。
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