第二十二章 霊媒師 岡村英海

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『うなな……! ご、ごめんねぇ、おはぎを知らんぷりしようと思ったんじゃないの。あとで声をかけようと思っていたのよ』 あらら、大福が焦ってる。 さっきまでの ”頼れるお姉ちゃん” はドコ行った。 『ホント?(ジトーーーーーーー)』 プ、プレッシャー! 金色のカワユイおめめが半開き、子供のジト目は圧がスゴイや。 『ほ、本当よ。だっておはぎは私にとって妹みたいなものだもの。ただ、』 『ただ?』←おはぎの声。  ただ? ←僕の声。(ハモった) 『ただ、そばに英海(ひでみ)がいたから……』 えぇ!? そうなの!? 僕のせい!? な、なんで!? ややや、ゴメン、なんでか分かんないけどゴメン! 大福の爆弾発言。 僕があばばとテンパッてると、大福は少し黙っておはぎのほっぺをペロリと舐めて、ポツリポツリと話し出したんだ。 『……おはぎはこの家の子供で幸せだった?』 聞かれたおはぎは一瞬ポカンとしたけれど、 『うん! 幸せだった! トウとカアは優しいから大好きにゃ。いっぱいだっこしてくれたし、いっぱい遊んでくれたし、おいしいゴハンもいっぱいくれたんだにゃ。おはぎ、ササミが好きなの』 すぐに元気にこう答え、本当に……本当に幸せそうな顔をしたんだ。 『そう、おはぎは大事にしてもらってたのね。ニャン生は短かったかもしれないけど、この家の子供で良かったわね』 『うん!』 『あのね、さっき、すぐに声をかけなかったのはね、おはぎがお父さんとお母さんを大好きなように、私も英海(ひでみ)が大好きだからなの。もちろんおはぎのコトも大好きよ。それと……私のコトは忘れてしまったけど、お姉ちゃんも大好き』 静かな声だった。 大福は僕もおはぎも、それから ”お姉ちゃん” ……前の飼い主さんの事も大好きだと言った。 『私は今、おはぎのお父さんとお母さんの子供、英海(ひでみ)と一緒に暮らしてるの。現世に来て初めて会ったのが英海(ひでみ)でね、とっても強くて優しい子なのよ。私はあの子に救われた。……辛かった事、悲しかった事、そういうのぜんぶ、たくさんの愛情で癒してもらったの、』 大福、違うよ。 僕は何もしていない、僕の方が癒してもらってるんだ。 姫が隣にいるだけで、どうしようもないくらい幸せになるんだもの。 『私は英海(ひでみ)が大好き。大好きだから……あまり心配かけたくなかったの。あの時、おはぎを視た時すぐに分かったけど、あのまま話をしたら、虹の国であった事、お姉ちゃんに置いてかれちゃった事、英海(ひでみ)に知れてしまうと思って。おはぎはなにも知らないから、英海(ひでみ)の前で話してしまうかもしれない。だから隠れて、あとで2匹になった時に、しゃべっちゃダメよってお願いしようと思ったの。ごめんね。おはぎはなにも悪くなくて、すべて私の都合だわ』 大福……そうだったのか……なのにごめん。 僕はすべてを知ってしまった。 おはぎの霊視で一緒に視てしまったんだ。
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