第二十二章 霊媒師 岡村英海

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大福が内緒にしたかった事。 ワザとじゃなくても、僕はすべてを視てしまった。 視た事は取り消せないし、なかった事にも出来なくて……だからこそ、どうしていいかが分からなかった。 大福に悪くて、今すぐにでもあやまりたくて、……でも、それと同時、こうも思うんだ。 僕はさ、姫のコトが大好きだから、心配だろうが迷惑だろうがお砂だろうが、何をかけられても良いの、何をされても何を言われても構わない、最終的にお姫が笑ってくれるなら、なんだって受け止める、なんだってしてあげるのに……って。 悶々とそんな事を考えて、一旦霊視を止めようかと……思った時だった。 おはぎがおずおず、こんな事を言い出した。 『そか……そうだったんだ……おはぎ、小雪を困らせたにゃ……ごめんなさい。で、でもね、あのね……うんとね、お、おはぎ、小雪の気持ちワカルにゃ。おはぎも同じなの。おはぎが現世に来たホントの理由は、トウとカアがおはぎのコトをちゃんと覚えてるか確かめたかったんだにゃ……兄ちゃん達と違って、おはぎはすぐに死んじゃって、ちょっとしかいなかったから不安だったの。でも、そゆの言ったら困らせちゃう、心配かけちゃう、だから言えなくて、それで、みんなに黙って現世(こっち)に来たんだにゃ。そ、そしたら、』 おはぎはココで言葉を止めると、長い尻尾をブワっとさせて股の間に挟みこみ、左右の耳をイカみたいにペタッと倒して、霊体(からだ)を丸めて小さくなった。 え、えぇ?  えっと……お、おはぎさん?  いきなりどうした? めっちゃガクブルしてますけど? めっちゃ目が泳いでますけど? 『そ、そしたら、お、お、おはぎ、サンにいっぱい怒られたんだにゃ……! 「フッシャーーーーッ」って「おはぎぃぃぃぃ!」って……!』 あ、なるほど、それでか。 ガチギレサンの剣幕たるや凄かったもんねぇ。 おはぎはその迫力を思い出し、ガクガクブルブルしてるのだ。 『す、すごくすごく怖かったんだにゃ、あんなに怒ったサンは初めてだったんだにゃ…………でもね、言ってたよ。「これからは黙ってどこかに行ったりしないで、心配させないで」って。おはぎはムズカシイコトはよく分からないけど、でも、……でも、でも、サンがあんなに怒ったのは家族だから、大好きだから、おはぎが黙ってガマンしちゃうと、もっと心配かけるんだにゃぁって……思ったの』
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