第二十二章 霊媒師 岡村英海

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途中で何度もつっかえた、言葉は幼くたどたどしい、……けど、おはぎの気持ち、おはぎの思い、おはぎがなにを伝えたいのか、それは充分分かった。 そうだよ、おはぎの言う通りだ。 家族だから、大好きだから、その家族が悲しかったり辛かったりは嫌なんだ。 そういうの、重たい荷物は一緒に持てば軽くなる。 持たせたら悪いとか、心配をかけるとか、そんなの一切考えなくていいんだよ。 そんな事を思ったら、大福も、おはぎもきなこも歴代の猫達も、みんなみんな家族なの、岡村家は大所帯、と僕はもう涙がダーダー流れてきちゃって大変なコトになっていた。 が、しかし、その涙を一瞬で引っ込めたのは、家族の末っ子おはぎだった。 『さっきのアイツ……、』 ん? アイツって僕のコト? 『小雪がアイツのコトが大好きなのは分かったにゃ。アイツに心配かけたくないってコトはほんとにほんとに大好きってコトだもん。おはぎ、その気持ちはよーくワカルにゃ。だけどまだ信じてないにゃ。ヒデミはあんなにちっさかったのに大きくなりすぎだにゃ。トウとカアの子供だって言うけど、子供のクセにトウより大きいのがウソくさいにゃ(キリッ!)』 え……? ちょ、まだ疑ってるの……? おはぎ、しつこくない……? ああ、でもなぁ……そういや猫って、特に仔猫はしつこいよねぇ(ま、そこも可愛いんですけどっ)。 ゴハン! オヤツ! 遊んで!  ヒトの都合はお構いなしで、家の中をどんなに逃げても追ってくるし、ニャーニャーとまとわりついて離れない。 そのしつこさは、ある意味感心するほどだ。 しつこさ黒帯、おはぎはフフンと鼻を鳴らしてさらに続けた。 『ワルイヤツじゃあなさそうだけど、本物のヒデミかどうか、あとで確かめるにゃ。小雪が言ったみたいに匂いを嗅ぐにゃ。おはぎ、ヒデミの匂いは覚えてるもん』 あ、うん、ぜひそうしてください。 僕、本物です、ウソじゃないです。 父さんよりも身長は高いけど、正真正銘、岡村英海(ひでみ)で間違いないです。 『匂いを嗅いで、顔も近くで良く視て……それと、それと……そだ!(ピッコーン!) 味見をするにゃ! おはぎ、赤ちゃんヒデミの毛繕いもしてたから味を(・・)覚えてるんだにゃ! 匂いを嗅いで味見もしたら、本物かどうかすぐにわかるにゃ! おはぎ、かしこいにゃー!』 僕を味見……って、ああ、そうか、そういうコトだったのかー! 僕はさっき、リアルのおはぎに頭っから食べられたんだ。 はむはむはむはむ、しつこいくらいに、はむはむはむはむ。 なんだってそんなコトをするのかなって、ドキドキしたりポカンとしたりしてたけど、謎が解けたわ。 匂いを嗅いで味見して、本物のヒデミかどうか確認中だったのね。
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