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PM23:57
夜も更けて、そろそろ日付が変わろうとしている。
この数時間、霊視を通してすべての事情が分かった僕は、おはぎを連れて1階へ行こうとしたのだが……すぐにという訳にはいかなかった。
「おはぎ、今から父さん達に会いに行こう。ん? そうだよ、会いに行くんだ。え? すぐに変身するから待っててだって? ううん、もう巨大化しなくて良いんだよ、おはぎはおはぎのまんまでいいの。心配しないで、今度は気づいてくれる。気付くだけじゃない、お話だって出来るからね。ん? そんなの信じられないって? あはは、大丈夫。信じて、その為に僕がいるんだ。正確には僕と大福だけどね」
僕がおはぎにそう言うと、カワイイおめめをキラキラさせて『へにゃ! へにゃ!』とはしゃぎだす。
あぁ……こんなに喜んじゃって……そうだよね、ここまで来るのにたくさん苦労をしたんだもの、そりゃ嬉しいよね。
よしっ!
僕、頑張っちゃう!
今すぐ1階に行こう!
最高の再会にするんだからねっ!
さっそく仔猫を抱きかかえ、お姫も一緒に部屋を出ようとしたのだが……
『へ、へにゃ!』
突如おはぎはむずがって、小さな霊体をジタバタさせると、僕の腕から液体みたいにニュルンと抜け出し、ターーッと走ってベッドの上に飛び乗った。
そして何を思ったか、んべんべと一心不乱に毛繕いをし始めたのだ。
「えっと……おはぎさん? いきなりどうしたの? 毛繕いならいつでも出来るじゃない。なんでこのタイミング? あ、もしかして緊張してきちゃった? 心の準備が必要かな? かな?」
可愛い猫め、なんてコトを考えながら、必死すぎる毛繕いを眺めていると、隣で視ていた大福が同じくベッドに飛び乗って、おはぎの毛皮を優しくザリザリし始めた。
や、やだ……!
この2匹、激カワイイんですけど……!
くどいようだが視ているだけで癒される、幸せになる、さりげなく僕の手を近くに置けば、ペロリとひと舐め毛繕いをしてくれた(ショボイ指毛だけど)。
『うなな、(ザーリザーリ)』
『へ、へにゃ……! へにゃにゃ(んべんべんべ)』
おはぎと姫は言葉短く会話を交わし、あとはひたすら毛繕い。
てか、おはぎったら毛並みを無視してんべんべと舐めるから、パヤパヤ毛皮が逆立っちゃってクチャクチャだ。
そのクチャクチャを大福がキレイに揃えて整えて、最終的にはツヤツヤピカピカ、おはぎはすっごい美ニャンになった。
『へ、へにゃあ? へにゃへにゃへにゃ……!』
心配そうな上目遣い。
気弱な顔で、おはぎは僕に何かを言ってる。
何を言ってるんだろう?
さっきまで、霊視を通せばおはぎのコトバは人の言葉に変換されてた。
それに慣れてしまった僕は、焦ってしまって瞬時に理解が出来なかった、……が、こんなに必死に話してるんだ、なんとしてでも理解をしなくちゃ。
落ち着いて良く聞いて、普段の僕は猫のコトバが分かるじゃない。
100%じゃないかもだけど、8割9割理解が出来る、意思疎通が出来るんだ。
集中して、おはぎのコトバを耳じゃなくてココロで聞くんだ。
そうすれば、いつもみたいに分かるはず……
『へにゃぁ? へにゃにゃ? へにゃぁ? へにゃにゃにゃ、』
……
…………
………………おかしくないかにょ……?
おはぎ、変じゃない?
毛皮、汚れてない?
トウとカアに会えるんだもん、
キレイにして会いたいの、
カワイイねって言われたいのにゃ、
ああ……おはぎはそんな事を思っていたのか。
そうか……うん、だいじょうぶ、すごくツヤツヤ、すごくカワイイ。
だいじょうぶ、ダイジョウブ、世界で一番可愛いよ。
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