第二十二章 霊媒師 岡村英海

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◆ 最初からぜんぶ話そう。 父さん達を悩ませた怪現象の真相も、父さん達に会うために必死に頑張ったおはぎの事も、1階(ここ)に来る寸前におはぎは一生懸命毛繕いした事も、そういうのぜんぶ話すんだ。 ツヤツヤのピッカピカ。 世界で1番美ニャンのおはぎは、小さな霊体(からだ)を細かく震わせ真ん丸黒目を視開いて、期待と不安をごちゃまぜにさせながら、僕の胸に爪を立ててしがみ付く。 そんなおはぎのカワイイオシリをぽんぽん叩き、”だいじょうぶダイジョウブ” とおまじないを唱えてから頭頂部にちゅーをした。 ああ……良い匂いだなぁ。 大福とおんなじ、たっぷり干した布団の匂いだ。 おまじないも済んだところで、おはぎを片手で抱っこしたままドアを開け、仔猫曰く ”ゴハンを食べる部屋” に足を踏み入れた。 すると…… 「英海(ひで)!」←父さん 「英海(ひでみ)!」←母さん 「ほにゃっ!」←きなこ ほぼほぼ同時に2人と1匹の声が重なった。 みんな起きて待っててくれたんだな、ありがたいな……なんて思っていると、だっこのおはぎは首をにゅーんと伸ばしつつ(猫は首もよく伸びる)、後ろを向いて父さん達を視つめてる。 小さな霊体(からだ)は小刻みに震えてて、垂らした尻尾をブンブン振って、はやる気持ちが僕にもガンガン伝わるよ。 おはぎ、もうちょっとだからね、先に事情を説明するからあと少し辛抱してね。 「父さん、母さん、きなこ、お待たせ」 言いながらみんなが囲むテーブルの、僕の席に腰を下ろして胡坐をかいた。 そこにすかさず大福が飛び込んで、さも当然と言わんばかりにクルッと丸まりアンモニャイトと化したのだ。 うっわー! 手にはおはぎで膝には大福、すぐ近くにはきなこもいるし、キャー! サイコー!  こんな時だけどスーパーウルトラフィーバータイムに突入です! おはぎもきなこも大福も、みんなプリティー、マーベラスゥ! って……イカン、あまりの可愛さに我を見失ったよ。 気を引き締めなければ。 ニヤける顔を力業で引き戻し、まず最初に話をしたのは大福の事だった。 「父さん、さっきは心配かけてごめんね。あのあと無事に大福を視つける事が出来たんだ。さらわれたって大騒ぎしちゃったけど、アレは僕の勘違いだった。 大福はさらわれたんじゃなくて、オトモダチと会ってたんだよ」 そう、先にこれを言わないとね。 霊力(ちから)を持たない父さんなのに、幽霊が、妖怪が、猫又が、と騒ぐ僕を信じてくれた。 僕の大事な大福を一緒に探してくれたんだ。 「視つかったのか! ああ……良かった! 待ってる間も気になっていたんだよ。猫は大事な家族だもの、その家族になにかあったら悲しいからさ」 母さんにも話していたのか、2人共 ”良かった良かった” と笑い合っていた。 まったく、この両親(ふたり)は相変わらずだ。 猫が絡めば大体なんでも受け入れる、猫の為ならなんだってしちゃうんだ。 年季の分だけハイスキル、僕以上の猫廃人だ。 これなら……大丈夫かな? おどろかないでくれるかな? このあと両親(ふたり)には、まずは大福の姿を視てもらおうと思ってるんだ。 お姫のチカラ、猫又の妖力を使ってね。
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