第二十二章 霊媒師 岡村英海

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これからお姫とご対面、……なのだが、“大福が視つかった” という朗報で、少しだけど肩の力が抜けたみたい。 いつもの調子を取り戻し、母さんは「あんたに夜食があるの」と、おにぎり3つを出してきて、父さんは「お茶飲むかい?」とハーブティーを淹れだした。 ちなみにきなこはさっきから、僕の胸にしがみついてるおはぎに目線が釘付けだ。 てかスゴイな、本当に視えてるんだな。 猫なのに霊力(ちから)持ち。 きなこがもし人間だったらウチの会社にスカウトしたい、……って、やっぱりダメだ、心配で現場になんか出せないよ。 霊視で霊力(ちから)を使った僕は、カロリー消費で腹ペコだった。 なもんで夜食はありがたい。 シャケ、梅、おかか、爆弾みたいなおにぎり3つを瞬殺で平らげて、つかえる喉をスペアミントのハーブティーで流し込む……と、あっという間にお腹が膨れて大満足だ。 気力も霊力(ちから)もチャージ完了、というコトで僕の膝でアンモニャイトで丸まる姫を「先生、出番です」と時代劇風に起こしてみた。 『……うなぁん、』 チロ、と片目を薄く開け、四肢を伸ばして眠気を払う。 大福はすくっと立って首を伸ばすと、僕とおはぎと、その両方に鼻ちゅーをしてくれた。 よし、準備オッケーだ。 「父さん、母さん。あのね、ウチで起きていた怪現象、すべての謎が解けたよ。誰が何の為にあんなコトをしてたのか、これからぜんぶ説明する」 おぉ!! 両親(ふたり)の声が重なった、……と同時、硬い空気が流れだす。 ああ……せっかく力が抜けたと思ったのに……まぁ、無理もないか、怪現象にずっと悩んできたんだもの。 でもね、だいじょうぶダイジョウブ、父さん達も大丈夫だからね。 「それで、話を始める前に視てほしいモノが、……いや、会ってほしい仔がいるんだ。今からする話は ”幽霊” とか ”死後の世界” とか、そういうのがメインになる。だけど、霊感の無い父さん達からすればピンと来ないと思うんだ。だから今夜は特別、2人にも幽霊を視てもらいます」 えぇ!? おっと2回目。 またもや両親(ふたり)、キレイに声が揃ったわ。 ま、そうなっちゃうよね、いきなりこんなコト言われたらテンパるよね。
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