第二十二章 霊媒師 岡村英海

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「ちょっと待って! 父さんも母さんも幽霊を視るの? これから? ここで? ウソだろ? だって英海(ひで)も今言ってたけど、父さん達に霊感はないんだよ。今まで1度も幽霊なんて見たコトがないし、金縛りもないんだ。なのに、そんな、」 あばばと慌てる父さんは、喋りの途中でハーブティーを一気飲み。 母さんはきなこをギュッとだっこしながら「ソンナノムリデース」となぜか片言になっていた。 「あはは、や、ごめん笑って。あのね、大丈夫。今夜会ってもらう幽霊達は怖くない仔達なの。だから安心して。それどころか……ふふふ、まぁいいや。説明するより直接会ってもらった方が早いし。____そんじゃあ大福先生! お願いしますっ!」 ムリーーーーーーー!! 激しいシャウトをキメた両親(ふたり)をチラリと視てから。 三尾の猫又、大福姫は颯爽と歩き出しそそくさとテーブル下に潜り込む。 そして、 『2人に足りないスキルなぞ、私の妖力で余るほど補ってやる____時は満ちた。いざ! 私の姿を視るがいい!』 と、小さい声でコソコソ唱えた数秒後(相変わらず僕の前で人語は喋らないという徹底っぷり)。 ドチドチドチ、 視た目体重、推定6キロ。 真白でフワフワぽっちゃり猫が、テーブルの下から姿を現した……刹那。 「「おあぁあ!? えっ!? 猫!? か、か、可愛いぃぃぃぃ!!」」 あらやだこれで3回目。 両親(ふたり)は息もピッタリに、決して急には動かずに(猫はいきなり動く人が苦手)、決して大きな声は出さずに(猫は耳が良いので大声が苦手)、顔はすこぶるニヤけてるけど、静止でちっさく歓声を上げたのだ。 どうやらうまくいったみたい。 今の両親(ふたり)は大福の、プリティでキュートでラブリーでフェアリーでエンジェルすぎるゴージャスボディが視えてるようだ。 さすがは大福、三尾の妖力(ちから)は伊達じゃない、てか天才すぎる。 「ひ、ひ、英海(ひで)! こちらのお嬢さんは尻尾が3本! 普通の猫じゃない! という事はもしかして……!」 興奮しきりの父さんが音量ミニで僕に問う。 「うん、この仔が大福。僕の大事な猫で今一緒に暮らしてるんだ」 そう答えると、ササッと母さんが割り込んで、 「初めて聞いたわよ! なんでもっと早く連れてこないの!」 とプチギレだ、……って、なんだこりゃ。 コレってまるで、”すでに一緒に住んでる結婚前提のカノジョを初めて実家に連れて来た” 的な感じじゃない。 ま、ほぼほぼそれで正解なんだけどさ(大福は僕の嫁)。
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