第二十二章 霊媒師 岡村英海

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白くてモチモチ、お餅界のプリンセス。 黄金色のキラキラおめめ、オハナはほんのりピンク色、ぴょこんと立った三角お耳に、たゆんたゆんなぽってりお腹____大福に全方向死角なし、どんな角度でどこから視てもパーフェクトプリティだ。 そんなお姫に父さん達は釘付けだった。 ついさっきまで、”幽霊視るとかムリーーーー!” って言ってたのにさ。 それがどうよ、2人とも身を乗り出して夢中になって視てるんだ。 もうこれ、フィーバータイム突入か? 大福が右に動けば右を向き、左に動けば左を向く。 その間、彼らはずっとゆっくりゆっくり瞬きを繰り返し、”アナタに敵意はありません、というか大好きっ!” と、猛アピールをしていた。 あらら、やっぱり僕らは親子だな。 僕もおんなじ、大福に初めて会った時、好きの気持ちを伝えたくって ”ゆっくり瞬き” しちゃったもん。 一方、注目される大福はというと……至って通常運転だった。 ぷはぁぁ……と大きくあくびをし、後ろ足で耳の後ろをカイカイし、ドテッと座って毛繕い、特別なコトは何ひとつしていない。 だがそれで良いのだ。 猫は基本自由なイキモノ。 好き勝手に振舞ってるのを拝見するのが下僕の喜び。 今、父さん達は喜びいっぱい萌えいっぱいだった。 「あぁぁぁ……可愛いなぁぁぁ! めぐちゃん見て、あんなに長い尻尾が3本もあるよ、なんてお得なんだろう!」 そう言って悶絶するのは父さんだ、……って、突っ込みどころが満載ですよ。 息子の前で ”めぐちゃん” 呼びになってるし(いいけど)、三尾を視て ”お得” だなんて発想が息子と一緒だし。 「そうそう、お得よねぇ! ねぇ、ひろくん気が付いた? あの尻尾、3本バラバラに動かすコトも出来るみたい、器用ねぇ。あぁぁぁ、可愛い! あの尻尾でペシペシ叩かれたいわぁぁぁ!」 おっと、母さんも思いっきり ”ひろくん” 呼びになってるよ(もう好きにして)。 てか母さん、分かっちゃいたけど上級者だな。 尻尾() ”さわりたい” じゃなく、尻尾() ”叩かれたい” のか。 ま、気持ちはよーくワカルけど。 …… ………… そんなこんなで盛り上がり、父さん達は人生初、”命無き者” を視たのだが……今のところ怖がってはいないようだし、拒否反応もないみたい。 良かった……幽霊と言ったってヒトじゃなくて猫だから、大丈夫だろうと思ってたけど絶対とは言い切れなくて、万が一、悲鳴を上げて怖がってしまったら……おはぎに会わせられなくなる。 頑張った仔猫の為にも失敗はしたくない、だけどこれならガチの本気で大丈夫そうだ。 よし、じゃあ次はいよいよ____おはぎ、キミの番だよ。
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