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「ママ、ケーキだよ! これね爺ちゃんがママに買っていこうって言ったの。ママはイチゴのケーキが好きだからって。お店で一番大きくて一番高いの買えってうるさかったんだよ。……あっ、どうしよ、テーブルがない……荷物まだ届いてないから……うーん、あ、これでいっか」
ユリちゃんは一旦ケーキを床に置くと、自分のキャリーバックを豪快に横倒しにし、ポケットから出したハンカチを広げて敷いた。
てか、ハンカチ小っさ!
ぜんぜんクロス代わりになってないよ。
女の子らしい子だと思ってたけど、この大ざっぱさは混合型なんだろうか?
『わぁ、すごい!』
田所さんが歓声をあげた。
『本当、キレイだわぁ。やっぱり東京のケーキは違うのねぇ』
と、目を丸くするお母さん。
『いやはや私まで呼ばれてしまって申し訳ない。しかし見事なケーキ! まさに職人技!』
先代は絶賛後ケーキを前に拝み始めたけど、ちょっと待って、アナタは拝まれる側の人でしょうよ。
「おい、ユリ、ロウソクどこだ?」
だから社長も!
今日のこれは誕生日会じゃないですから!
年の数だけロウソクじゃないですから!
「あ、ごめん! ロウソクここー」
って、ユリちゃん、ロウソクあるんかい!
『ユリ、ここに立てろ。真ん中の一番目立つトコによ』
ロウソクを手に持つユリちゃんに、『オラーイ、オラーイ』なんてガソリンスタンドのスタッフさんのような誘導をかけるお父さん、それに合わせて真顔でゆっくりロウソクを降下させるユリちゃんに、田所さんもお母さんもお腹を抱えて笑ってる。
社長も「そこだ! もう少し! いや待て! 3時の方向に修正要す!」とか参戦中。
先代も盛り上げようとしてるのか、光の速さで電気ツチノコを量産しちゃあ、その辺に放ってる。
その電気ツチノコはクネクネと身をよじらせているけど……もしかしたら踊っているのかもしれない。
僕はといえば、そんなみんなをスマホのカメラで撮りまくっていた。
まだ自覚は薄いけど、高いと言われる僕の霊力なら気合い入れて念じればクッキリハッキリとした心霊写真が撮れるんじゃないかと思って。
画面を視れば生者となんらかわりのない家族や先代が映ってるけど、どうかこれが後から見るユリちゃんにも視えますように、そう祈りながら、僕は何枚も何十枚も撮り続けていた。
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