第二十二章 霊媒師 岡村英海

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◆ 「じゃあ、おはぎは "虹の国” という所からイチニャンだけで ”この世” に来たのかい? あぁ……なんて無茶を……! おはぎ、大丈夫か!? どこもケガをしてない? 痛い所はない? この世には車も電車も通ってるし、悪い人もいるかもしれない……あぁぁぁ! 分かっていれば迎えに行ったのにぃぃぃ!」 そう言って頭を抱える父さんは、またもや涙目だ。 一緒に聞いてた母さんも涙目なのだが、さすがは母親、頭を抱える代わり、気丈にもおはぎの霊体(からだ)をくまなくチェック。 そして、なんともないコトが分かると…… 「はぁぁぁぁ……良かった……! どこにもケガはないみたい。……だけどホントに無茶するわよねぇ。おはぎは昔からそうだった。好奇心旺盛で、なんでもやってみないと気が済まないの。ちょっと目を離すととんでもないコトしてるのよ……(トオイメ…)ねっ、おはぎ。あんたはヤンチャでイタズラばかり、カアは毎日大変だったわぁ」 ぶちゅー! 大変だったと言いつつも、すこぶる笑顔でおはぎにキッス。 触れるコトは出来ないけれど、仔猫の頭にエアーキッスの雨あられだ。 それを視ていた父さんは、 「あ! 母さんばっかりズルイぞ! おはぎ、コッチにおいで~、トウもぶちゅーしてあげるよ~」 と、デレデレしながら手招きをしはじめた。 おはぎは大忙しだ。 カアのぶちゅーが嬉しくて、『へにゃあん』と甘えて目を細めるも、コッチでトウも呼んでる。 トウのぶちゅーも外せないし、カアのそばにもこのままいたい。 金目をキラキラさせながら、どうしようかと悩んでいると、さらにココにきなこが参戦。 生きてる猫は、ゆっくりパチパチ瞬きしながら鼻ちゅーでご挨拶をしてくれたのだが……これにおはぎは歓喜した。 岡村家(ココ)に来て初めて会ったきなこ。 トウとカアの子供なら、おはぎにとっては新しいお姉ちゃんだ。 姉妹だもの、家族だもの、仲良くしたいと思っていたのだ。 だが、おはぎが巨大化した事で、お姉ちゃんを怖がらせてしまった。 嫌われたかと心配したが、こうして優しくしてくれる。 『へにゃあ、へ、へにゃあん!』←訳:今まで怖がらせて悪かったにゃ、お、お姉ちゃん! 『ほにゃにゃ、ほにゃあん』←訳:もういいにゃ、妹よ。 おはぎときなこ、2匹の会話を聞いた僕らは、ズキューーーーンと胸を撃ち抜かれ、 「「「ウチの仔達が仲良しになった……!!」」」 親子揃ってパーフェクトにハモったのだ。 …… ………… おはぎ、めちゃめちゃ幸せそうだ。 父さん達にこれでもかと可愛がられ、きなこも優しくしてくれる。 これまでの辛い思いが、ぜんぶぜんぶ報われたんだ。 あ……そういや、聞いてなかったな。 おはぎが一番知りたかったコト。 トウとカアに真っ先に聞きたかったコト。 ____おはぎのコト覚えてる? ____今でもおはぎのコトが好き? あはは、 おはぎも、僕も、聞くの忘れてたよ。 もっとも……聞くまでもなかったんだけどさ。
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