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「……そう言えば大福ちゃんのお迎えはどうなってるの? 元々虹の国にいたんでしょう? なのに、どうして今は英海と一緒にいるの?」
アウチ……!
これはマズイ、いくらなんでも直球すぎる……!
大福は他者の幸せを心から喜べる仔だ、だけど今はタイミングが悪すぎる……!
「母さん!」
僕はキッシュ片手に大きな声をだしてしまった。
途端、静まり返るリビング。
父さんも母さんも、なにがあったか分からずにポカンとしている。
「あ……いや、その……シチューのおかわりはいるかなって、」
我ながら下手な言い訳だ。
そんなん絶対思ってないってバレバレだよ、そう気を揉んだのだが。
「おかわり……そうね、いただこうかしら」
え?
母さん食べるの? そんなに食べれるの? と意外な答えにビックリしながら、お皿を受け取る。
鍋からシチューをよそいつつ、チラリとお姫を視てみると……目を閉じていているから表情が分からない。
むぅ……どうしたものかと焦っていると、母さんが訝しげに話し出したのだ。
「英海……あんた、なんだか変ね。もしかして大福ちゃんのコト、聞いちゃいけない事だった?」
ドストレートだ、もう言い訳のしようがない。
大福は僕が霊視ですべての事情を知ってる事すら知らないのに、あとで話そうと思っていたけど、そうもいかないみたいだ。
仕方がないと、僕はなるべくフラットにお姫の事情を話したの。
すると……母さんは、
「そう……かわいそうに、」
涙声で短く呟いたんだ。
それに対して大福は、背を向けたまま何も答えない……が、耳だけ僅かにピクリと動かす。
「”かわいそう” って……母さん、そんな言い方はないよ。大福は今は僕と一緒にいるんだ。僕は大福を愛してる、とてもとても大事な仔だよ。この仔はかわいそうなんかじゃない。僕が絶対幸せにするんだ……!」
大福の耳がピクピクピクっとさらに動いた、……が、振り向いてはくれなかった。
一方、珍しく語気強めな僕の言い方に、母さんも父さんも目を真ん丸にしていたが、一呼吸置いた後、母さんがこう言ったんだ。
「英海、あんたもあわてんぼうね。違うわよ、かわいそうなのは大福ちゃんじゃなくて飼い主さんの方よ」
「へ……? 飼い主さん?」
「そうよ。だってこんなに可愛い大福ちゃんだもの。飼い主さんも本当は忘れたくなかったはずだわ。でもね……人は弱いから……年や病気に勝てない事もあるの。大福ちゃんの飼い主さんはご病気だったのよね。だけど、それがなければ絶対に忘れなかったはずよ」
あ……そういう意味の ”かわいそう” か……
母さんとも尻尾で繋がる大福は、まだ背中を向けているけど、耳をグルンとこちらに向けている。
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