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「そう……可愛い我が子を忘れたい親がどこにいるの。壊れそうに小さな頃から面倒見て、それがだんだん大きくなってイタズラに困らされ、だけど結局笑ってしまう、一緒に過ごした時間は宝物だわ。先に逝ってしまっても絶対に忘れない、絶対に覚えてるって……心に誓って刻み込んで……なのに……自分の気持ちと関係なく……時に病気が……時に老いが……記憶を奪ってしまう……そうなったら、自分だけではどうにも、」
ここまで話した母さんだったが、それ以上は無理だった。
ズルズルと鼻をすすり、腰に巻き付く姫の尻尾を泣きながら抱えてる。
こんなに感情的になるなんてな……ああ、でも……母さんと大福の飼い主さんは ”猫の母” として、立ち位置的に近いものがある。
もしかしたら先の未来、自分も同じように忘れてしまったら……と、不安がよぎったのかもしれない。
……
…………
「えっと……少しいいかな?」
小さく挙手する父さんが、泣いてる母さんの後を継いだ。
「父さんもね、母さんと同じ意見だ。大福ちゃんの飼い主さんは忘れたくて忘れたんじゃない。だって猫は子供と一緒、家族だもの。子供の為ならエンヤコラだ。どのくらい頑張っちゃうかというとね……ホラ、母さんのココを見てごらん。頭の後ろ側、何か所か毛が生えてないだろう? コレ、なんだと思う? なんと、おはぎを庇ってカラスに襲われた傷跡だよ」
え……!?
そんなの初耳なんだけど……!
『へ、へにゃ……!』
どうやらおはぎも知らなかったみたいで、すごく動揺してる。
「おはぎはたぶん母猫とはぐれたんだろうなぁ。よちよち歩きの乳飲み子が、道でカラスに襲われてたのを、たまたま通りかかった母さんが助けたの。母さんは散々カラスに突っつかれて、血だらけで病院に行ったんだ。あ、動物病院の方ね。幸いおはぎに大きなケガはなく、そのまま連れて帰ってウチの子供にしたんだけど……母さん、すごいよねぇ。でもね、大福ちゃんの飼い主さんも同じだったと思うよ。だって視てごらん、このツヤッツヤな毛並み! これは相当大事にされないとこうはならないよ」
確かに……大福の毛皮はベルベットのように綺麗だよ。
僕も自慢に思うくらい……って、……大福が振り向いた!
コッチをジーッと視てるけど……なんだ? なにか話したそうだな。
「どうしたの? 大福、なにか話したいの?」
お姫の顔を両手で包んで聞いてみる、すると……
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