第二十二章 霊媒師 岡村英海

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それから………… 『へにゃーん!』←おはぎ 『ほにゃーん!』←きなこ 『うっなーん!』←大福 ドタドタドタドタドタドターーー!! 「こらぁ~待て待て~キャッキャ」←父さん 「つかまえちゃうぞ~ウフフ」←母さん バタバタバタバタバタバターーー!! と、追いかけっこで遊んでみたり(きなこ以外は姫の尻尾で繋がれてるから範囲はすこぶる狭いけど)、 「サンニャンともコッチにいらっしゃーい! カ ア が(・ ・ ・) ”ちゅるー” をあげますよー! トウでも英海(ひでみ)でもない、カ ア が(・ ・ ・)、あげるんだからねー!」 猫達の大好物、”ちゅるー” をあげるのは他の誰でもない、カアなのだと好感度を上げる為なら手段を選ばない母さんに、僕と父さんが ”ぐぬぬ” と唸ったり。 やってるコトは正直言ってくだらない……んだけど、この時間が楽しくて、心がウキウキバウンドしちゃって、ヒトも、ネコも、はしゃいで笑って遊びまくって、3日間が光の速さで過ぎていく____ ____それは突然だった。 トウとカアとサビ猫と。 再会を果たしてから3日目の夜。 この時、僕らはリビングに集まっていた。 僕が作ったゴハンを食べ終え、人はお茶、猫はお水と、ゆっくりまったり食後の休憩。 おはぎは目を輝かせていた。 ちょっとしたらまた遊ぶんだ、今夜はみんなで何をしよう。 おいかけっこも楽しいし、猫じゃらしも面白い、おやつの ”ちゅるー” も食べたいし、あたまに ”ぶちゅー ” もしてほしい。 あはは、まったくもって仔猫が一番元気だな。 自転車サイズの大福に、みんな仲良くもたれかかって休んでるのに、おはぎはだけは ”いつでも遊べるにゃ!” と張り切ってるんだから。 あーもーサイコーだー。 姫の尻尾と家族の愛で繋がって、人も猫も生者も死者も、関係なしに寄り添ってるの。 嬉しいな、幸せだな、出来る事ならこのままずっと、一緒にいれたらいいのにな……なんて、思った時だった。 僕の鼻にふわりと何かが降ってきた。 なんだ……? 何の気なしに鼻に手をやり、その ”何か” を取ってみる。 指先にくっついたそれは…… 「花……びら?」 それは桜の花弁によく似てた、……が、色は青。 空よりも少し濃くて、良い匂いもする。 『へにゃ……?』 小さな猫が、僕の隣で小さく鳴いた。 視れば額に花弁をつけている……色は赤、リンゴみたいなキレイな色だ。 これって…… 「あらぁ! あらあらあらあら! どこから入ってきたのかしら! ステキだわぁ!」 今度は母さんだ。 両手のひらを上に向け、天井から数を増やして降ってくる、色とりどりの花弁をウットリしながら視上げてる。 フラワーシャワーみたい、そうため息をつきながら、こうも続けた。 「本当にキレイだねぇ……幻想的だわぁ……色んな色の花弁が降ってくる。赤……橙、……黄色に緑、青も藍も……紫色もある……なんの花かしら? わからないけど、この色はまるで……虹みたい」 確かにそうだ。 数えてみればぜんぶで七色、まさに虹色。 この花弁は視た事がある、……いや、実際に目にしたのは今が初めてだけど、過去の霊視でこれを視た。 これってアレだ……虹の国が雷神号を迎えに来た時の……花吹雪ではないだろうか。 それはつまり、 とうとう、 おはぎの迎えが来てしまったんだ。
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