第二十二章 霊媒師 岡村英海

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父さん達への説明は、手短にしたつもりだった。 実際5分も経ってない。 本当はこんなに雑じゃなく、ちゃんと説明したかった。 でも時間がないの。 僕の頭の中には、霊視で視た雷神号が浮かんでいた。 彼の時がそうだったもの。 花弁が現れて、少しの会話はしたけれど、その後すぐに虹の国へと戻された。 そう……だからおはぎも、いつ消えてもおかしくない状態なんだ。 その不安を裏付けるように。 ゆるく舞ってた花弁に、急に速度が加わった。 四方八方、バラけていた虹色が円を描いて急降下。 サビ色の毛皮目指して集まり出した。 「ま、待って!」 母さんが悲痛に叫んで、おはぎの上に被さった。 父さんも上に重なり、母さんごとおはぎを隠す。 だが花弁は生者の身体を難なくすり抜け、おはぎの霊体(からだ)に付着する……と、あっという間に虹の層が厚くなり、それに伴い色が徐々に溶けだした。 『へ、へにゃ! へにゃにゃにゃにゃ……!』 ____待って! ちょっとだけ待って……! 父さん達の身体の下から声を大におはぎが叫んだ。 が、虹の国はそれに対して返事をしない。 なんで? 雷神号の時は天から声が降ってきたのに。 虹の国の役人さんが色々話してくれたのに。 『へにゃにゃ、へにゃへにゃ、へにゃへにゃへにゃにゃ、へにゃにゃ」 ____帰るから、帰るけど、まだちゃんとお別れしてないにゃ、だから 返事がなくとも諦めず、おはぎはさらに声を張った。 ちゃんとお別れしてないからと、だから少し待ってくれと、一生懸命お願いをしてるんだ。 それなのに、返事もなければ花弁も止まらない。 こんなに小さな仔猫がさ、こんなに必死に頼んでいるのに、無視ってそりゃあないんじゃない? 駄目なら駄目で、お返事くらいしなさいよっ! どうしよう、なんだか腹が立ってきた。 仔猫が、おはぎが、ウチの仔が、かわいそうじゃないのさ! フンガー!! 先代バリにキレてしまった。 僕はなんだかムカムカしちゃって、どうにもこうにも止まらない。 その勢いで両手両五指、向かい合わせに印を組む。 シュバババババ! 視てるがいい、こんにゃろめ。 名ばかりとは言え、僕は希少の子なんだよ。 瀬山さん(レジェンド)直伝、スゴイ技を視せてやるからっ!
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