2366人が本棚に入れています
本棚に追加
『へにゃっへにゃっ!』
”早く視たい!” とおめめ爛々。
おはぎはワクワク、父さんにまとわりついて離れない。
「待って待って! んもー近すぎー、困ったなー、これじゃあおはぎがジャマで開けられないよー(ニヤニヤニヤニヤ)」
むぅ……ウソばっか。
おはぎはユーレー、現世の物質に干渉出来ない。
だからどんなに近くたって、おはぎは箱をすり抜けるからジャマにならない、ヨユーで開けれるはずなんだ。
ワザとだ、コレ絶対ワザとだ。
開けられないフリをしてれば、いつまでたってもおはぎは傍を離れない。
完全なおはぎ狙い、魂胆は見え見えだ。
セコイ手に出た父さんを、母さんは呆れたジト目でジッと見る。
その目線に気がつくと、恥ずかしそうにコホンとひとつ咳払いをしてこう言った。
「ま、まぁ、今のは冗談。やだな、母さんも英海もそんな目で見ないでよ。今開けるから、チョット待ってて」
言いながら、座った背中をうんと丸めて、手に持つ箱をおはぎの目線に合わせて下げた。
『へにゃにゃにゃ!』←訳:きっとササミにゃ!
弾む声でおはぎは予想を立てたけど、残念、ササミは棚の中には入れないよ。
冷蔵庫に保管しないと悪くなっちゃうからね。
なんでもかんでもすぐにササミに結びつけちゃう、食いしん坊なサビ猫は、「じゃじゃーん!」の掛け声、父さんが開けた箱に顔を突っ込み覗き込む…………と、
『…………へにゃ……? ……へ、へにゃ……!』
仔猫はそのまま石化した。
え、やだ、どうした!
木の箱は、”頭隠して尻隠さず”、そんな恰好のおはぎがジャマで、ココからだと中身が視えない。
一体なにが入ってるのよ、気ーにーなーるー!
いつまでたっても箱から出ない、そんなおはぎに笑っちゃってる母さんは、丸いオシリに手を添えながらこう聞いた。
「おはぎは覚えてる? この中に入ってるの、ぜーんぶあんたのだよ」
おはぎのモノ……?
それって…………あ、……ああ……そういう事か……この中に入っているのは父さんと母さんと、そして僕にとっても大事な大事な宝物だったんだ。
聞かれたおはぎは、箱から頭をソロソロ出すとコクリと小さく頷いた。
埋蔵金でも視つけたみたいな顔をして、お口をきゅっと横に結んで、ソワソワしながら箱の中身を視つめてる。
「おはぎの毛皮は黒っぽいから明るい色が似あうのよ」
目を細めて幸せそうに。
母さんが箱に手を入れ取り出したのは、黄色地に赤いハートがたくさん描かれた猫用首輪。
内側には油性のペンで、
”岡村おはぎ、神奈川県K市××町2-2、090-××××ー××××(岡村大海)”
と書いてある。
これ……
生前のおはぎがずっとつけていた首輪だ。
最初のコメントを投稿しよう!