第二十二章 霊媒師 岡村英海

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「おはぎ、ちょっとコッチにきてごらん」 母さんがニコニコ笑っておはぎを呼ぶと、シュタッと素早くそばに寄る。 斑模様の長い尻尾を左右に振って、”嬉しいにゃ! 大好きにゃ!” と気持ちはダダモレ、可愛いったらありゃしない。 でもって……ぷぷっ! おはぎが尻尾を振るたんび、結ぶように繋がっているお姫の尻尾も一緒に動くのテラプリティー! 「ふふふ。おはぎは可愛いねぇ、良い仔だねぇ、んもー大好き。ほら、ココに座ってごらん。それでと……おはぎの首輪をこうしてあげれば……わぁぁ! 懐かしい、なんだか昔に戻ったみたい……!」 乙女のように声を弾ます母さんは、ハートの首輪をおはぎにあてがい笑いながら泣いていた。 隣で視ている父さんも、「可愛いなぁ、やっぱり似合うなぁ」と、同じように泣き笑う。 2人に褒められ嬉しいおはぎも泣いちゃって、いそいそ顔を洗ってた。 実際……これは決して親の欲目じゃなくってさ、ハートの首輪はおはぎにすっごく似合ってるんだ。 黒と橙、少し白。 この配色に黄色と赤がキレイに映えるの。 きっとさ、昔さ、父さんと母さんでさ、あーでもないこーでもないと騒ぎながら、おはぎの為に一生懸命選んだんだろうな。 「この箱はねぇ、おはぎのモノがいっぱい入ってるんだよ。この首輪もそうだし、他にもいっぱいあるの」 母さんはそう言うと、木箱の中に手を入れておはぎの形見を次から次へと取り出した。 「視て視て! この袋に入っているのはおはぎのお髭! 抜けたのぜんぶ取ってあるの! それからコッチはおはぎの乳歯! こんなに小さいのに一丁前に尖がってるんだからぁ! それとね、それとね、」 どんどん出てくるおはぎの形見。 使い込まれたネズミのオモチャに(ボロボロで原型留めてない)、おはぎ専用ブラシと爪切り。 お気に入りのハンドタオルに(これを敷いてあげるとゴロンゴロンして喜ぶ)、おはぎの名前のスタンプまである(特注で作ったらしい)。
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