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『…………へにゃ……へにゃ……へにゃぁぁぁん……!』
小さな猫は堰を切って泣き出した。
ペタリとその場に座り込んで、流れる涙がほっぺの毛皮を濡らしても、顔も洗わずほったらかしで泣き出したのだ。
それを視たトウとカアは大慌て。
”どうしたの?” ”悲しいの?” ”おなかが痛いの?” と、必死になっておはぎの顔を覗き込む。
ああもう、チガウよ。
ぜんぜんチガウ、逆なんだ。
おはぎはちっとも悲しくないし、おなかだって痛くない。
2人はおはぎが大好きだから、こんな風に泣いてしまうと心配でたまらない……うん、その気持ちはよく分かるけど大丈夫。
あのね、おはぎは嬉しいんだよ。
大好きなトウとカアが自分の事を忘れてなくて、今でも変わらず愛してくれる。
確かにさ、この3日間ずっと一緒で、おはぎも充分分かったはずだ。
でもこうやって、改めて言葉で聞けたのが嬉しくて、ホッとして……そう、この涙は幸せの涙なの。
僕はおはぎの過去を細かく視たから、すぐに答えが分かったけれど、視てない2人はテンパり中だ。
どうしよう、教えた方が良いかなぁと思ったけど……やめた。
すぐに分かるだろう、なんたって僕以上の猫廃人だ。
おはぎもきっと、僕が言うよりトウとカアに気づいてほしいはずだもの。
『へ、へにゃあ……(グズグズ)……へにゃあ(グズグズ)』←訳:ふぇぇぇ……(グズグズ)……ふぇぇぇ……(グズグズ)
涙と一緒にオハナも垂らして仔猫は2人を視上げてる。
飴玉みたいな綺麗な金目にトウとカアが映り込む。
泣き虫おはぎは何を聞いても ”グズグズへにゃへにゃ”。
心配もピークに達した母さんは、膝で歩いて前に出ると広げた両手をクロスに折り曲げ、その真ん中に小さな猫を抱き込んだ。
「……おはぎ……おはぎ……泣かないで……どうした……? ポンポン痛い……? あんたは昔からおなかが弱かったもんねぇ。ほら、こうしてたら治るよ。抱っこして……あったかくして……治るまでカアがずっとこうしてるからね」
ふれる事は出来ないけれど、それでも、母さんはおはぎのおなかを温めようと、曲げた両手を狭くして、一層優しく抱きしめた。
その後ろから父さんも、母さんの背中ごと愛しい仔猫を抱え込む。
『……へにゃ……』
2人の身体の隙間から、おはぎの声が小さく聞こえた。
少し掠れてる……いっぱい泣いたからねぇ、それでかなぁ。
『………………へにゃあ……』
聞こえるか聞こえないか。
そんな声が間を置いて何度が聞こえ、そのたび2人は囁くように、”なぁに” と応える。
そうやって、2人とイチニャン団子になってくっついてたら、いつしかおはぎは泣き止んだ。
代わり、幸せそうに喉を鳴らすゴロゴロ音が……明け方近いリビングに響いたのだ。
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