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父さんも母さんも、本当は帰したくないのだろうな。
分かるよ、だって僕も同じだもの。
だけど2人が言った通り、これで最後じゃないんだ。
いつかまた必ず会える。
その時はおはぎだけじゃなくってさ、サンも、シャチも、トラ3兄弟も、しらたまとくろたまも、みんなに会えるし、家族で一緒に暮らせるの。
だからさ、それまで少し淋しいけどさ、頑張ってさ、ウチの可愛い末っ仔を笑顔で送りださなくちゃ。
降る花弁はその数をますます増やし、どこからともなく吹く風が、花の欠片を蝶のように舞い上げる。
螺旋の軌道はゆるやかだけど、徐々におはぎに集まり出して、”カエロウ、カエロウ” と声なき声が言っていた。
『……へにゃあ、』
おはぎも泣いていた。
大きな目からポロポロポロポロ、水晶みたいな涙を落とす……が、それでも、表情は明るかった。
現世に来るまで抱えてた、不安や迷いが消えている。
虹と現世で離れても、”トウとカアを信じて待つにゃ” と、澄んだその目は雷神号のようだった。
母さんは仔猫のオハナにぶちゅっとしながら、
「おはぎ……おはぎ、虹の国に着いたらサン達にも ”大好きよ” って伝えて」
そう伝言を託した。
父さんは三角お耳をコチョコチョしながら、
「みんなで仲良くね。好き嫌いせずいっぱい食べて、よく寝てよく遊ぶんだよ」
と、生きてた頃と変わらない事を言う。
言われたおはぎは『へにゃっ!』とお返事、キリリとお顔を引き締めたのだが、それがまたとてつもなく可愛いの。
いっぱい泣いて、ほっぺはカピカピ。
さっきオハナも垂らしていたからマズルもゴワゴワ(オハナの下の ”ω” こんな風に見えるトコね)。
顔を洗うの忘れてるから、スゴイコトになっている。
でも可愛い、どんなおはぎも結局可愛い。
そりゃそうだ、だって大事なウチの仔だもん。
母さん達もそんなおはぎに吹き出した。
おはぎは意味が分かってなくて、最初はキョロキョロ戸惑ってたけど、トウとカアが笑っているのが嬉しいみたいで、元気にピョンピョン跳ねだした、……ってなんだこりゃ。
この跳ね方、まるでウサギそのものじゃない。
これじゃあ猫なんだかウサギなんだか分からなくなっちゃうよ。
天然か? と思ったら、本ニャンちょっと狙ったみたいで、『へぴょん! へぴょん!』とか言ってるの。
この不意打ちにヒトもネコも耐えきれず、お腹を抱えて笑ってしまった。
特にきなこはツボだったのが、ひっくり返ってお腹を出して笑ってる。
「「「あはははは!」」」←ヒト3人。
『うにゃはははは!』←三尾の猫又。
「ほにゃははは! ほぬあ!」←きなこ。(ツボっちゃって変なテンション)
迫る別れを数瞬忘れ、みんなで ”あはは” と笑い合う。
重なる声は重なる幸せ、……なんだけど、そこに、家族以外の別の声が重なった。
【あははははは!】←だ、誰……!?
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