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◆
右に左に流れる花弁。
螺旋の軌道は勢いづいて、目を細めなくては視界の確保が難しい。
それぞれ声を発するけれど、風に流され聞き取りにくい。
だから僕らは大きな声を出したんだ。
愛する家族としばしの別れ、変わらない気持ちを伝える為に。
「おはぎ! おはぎ! 気を付けてね! 虹の国に着いたらサン達と仲良くね!」
髪を押さえて必死におはぎに話してる母さん。
その隣では父さんも、
「必ず迎えに行くから! その時はみんなで一緒に暮らそう! あの仔達も、きなこも大福ちゃんも!」
手を伸ばしてそう言った。
『へにゃ、へにゃ、へにゃにゃ、へにゃにゃ、へにゃにゃ! へなな!』
____カア、トウ、ヒデミ、きなこ、小雪、またね!
お顔以外は花弁に包まれ、おはぎも必死に声を張る。
花吹雪はさらに加速が加わって、虹の色が滲んで溶けだしおはぎの霊体が霞んでく。
大福はギリギリまで家族に姿を視せようと、絡めた三尾を一層しっかり巻き付けた……が、残る時間は僅かのようで、天からの優しい声が【小雪さん! そろそろ尻尾を離してください!】と言っていた。
『うな……!』
可愛いオハナに深くシワを刻んだお姫が、ゆっくりと尻尾をほどき始めた。
カラダのどこでもいい、どこか一部に尻尾がふれていれば、互いの姿は視えるのだ。
だが尻尾が離れれば、父さん達はおはぎの姿を視失う。
シュルル……シュル……シュルル……
「おはぎ! おはぎ! 元気でね! 愛してるわ!」
「おはぎ! トウも愛してる!」
2人は必死に愛しい気持ちを言葉にのせた。
おはぎはそれを噛みしめて、幸せそうな顔をする。
シュルル……シュル……ルル……
そしてとうとう、お姫の尻尾がおはぎの尻尾と離れる寸前。
おはぎは最後____
頑張って頑張って、
すっごくすっごく頑張って、
『へにゃ……へにゃ……んん……!
……ヒロミ! ……メグミ! ダイシュキ……!』★
密かにずっと練習してた、
2人の名前を人語で呼んで…………虹の国へと帰って行ったのだ。
★おはぎはエイミーの名前も人語で呼んでいますがそのシーンがココです。
https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=1799&preview=1
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