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「…………行っちゃった、」
母さんが呟いた。
「行っちゃったね、」
同じく父さんも呟いた。
「……………………」
「……………………」
その後2人は無言になって、虹に行く前、最後におはぎを視た天井近くに目線を移す。
きっと……淋しいのだろうな。
いつか会えると分かっているのと、淋しい気持ちは別物だ。
分かってたって淋しいものは淋しい。
みんなで過ごした3日間が楽しかった分余計にね。
大丈夫かな……2人を元気付けてあげたいけど、どうすればいいんだろう。
丸めた背中が小さく見えて、心配になってしまった。
今夜はなにか美味しい物でも食べに連れ出そうかな、お給料は出たばかりだし、頑張ればちょっと贅沢な食事が出来るかもしれない……なんて、そんな事を考えていた時だった。
いきなりだ。
母さんが、丸めた背中をシャキンと伸ばし、天井に向かって両手をブンブン振り出した。
そして、
「リーさーん! リーさん聞こえますぅ? 岡村ですぅ! 岡村めぐみ、おはぎのカアですぅ! 聞こえたら返事してくださぁい!」
声を大に、虹の国のリーさんに呼びかけたのだ。
え、ちょ、どうしたの?
リーさんに何か用なの?
てかリーさんってまだ現世と繋がってるのかな?
おはぎが戻ったあとは声がしない、お迎え完了で回線(回線でいいのか?)切ったのかもしれないよ……と、思っていたのに。
【呼びましたぁ?】
すぐに返事が返ってきたのだ(レスポンス早っ!)。
それを聞いた大福は、お得な三尾をシュルルと伸ばし2人の腰に巻き付けた。
これでまたリーさんの声が聞こえるようになるはずだ。
いくらリーさんが返事をくれても、霊力がなければ聞こえない。
2人に足りない霊力を、お姫の妖力で有り余るほど補っていただいて初めて声が聞こえるのだ。
大福先生、いつもありがとござまっす!
「あ、返事してくれたーーー! リーさん、ありがとうございます! すみません、大きな声で呼んじゃって。でもリーさんとお話がしたかったんです。おはぎをはじめウチの仔達がお世話になってるんですもの。親としてご挨拶しておきたくて、」
ご挨拶…………って、ハッ!
確かにぃぃぃぃ!
ど、どうしよ!
さっき僕、さんざんリーさんと話したのに、ご挨拶どころかお礼もちゃんと言ってない!
30過ぎた大人のクセして恥ずかしいよぉぉぉ!
僕が悶絶していると、父さんも頭を抱えて悶絶しだした、ハハ…………やっぱり親子だな。
でもってウチのカアは頼りになるなっ!
「リーさん、ウチの仔達はどうですか? 良い仔にしてますか? ご迷惑かけてませんか? 特にトラ三兄弟は心配で……あ、でも良い仔達なんですよ。ちょっとウルサイけど、イタズラばっかりだけど。それからおはぎも。あの仔がこの世に来た経緯、人間の息子から聞きました。もう、本っっっっ当………………にっ! 申し訳ありませんでしたぁぁぁ!」
”たぁぁぁ!” のトコロで、腰の角度は90度。
母さんがガバッと頭を下げた。
その数秒遅れで僕と父さん、それからきなこと大福まで頭を下げた。
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