第二十二章 霊媒師 岡村英海

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「…………行っちゃった、」 母さんが呟いた。 「行っちゃったね、」 同じく父さんも呟いた。 「……………………」 「……………………」 その後2人は無言になって、虹に行く前、最後におはぎを視た天井近くに目線を移す。 きっと……淋しいのだろうな。 いつか会えると分かっているのと、淋しい気持ちは別物だ。 分かってたって淋しいものは淋しい。 みんなで過ごした3日間が楽しかった分余計にね。 大丈夫かな……2人を元気付けてあげたいけど、どうすればいいんだろう。 丸めた背中が小さく見えて、心配になってしまった。 今夜はなにか美味しい物でも食べに連れ出そうかな、お給料は出たばかりだし、頑張ればちょっと贅沢な食事が出来るかもしれない……なんて、そんな事を考えていた時だった。 いきなりだ。 母さんが、丸めた背中をシャキンと伸ばし、天井(うえ)に向かって両手をブンブン振り出した。 そして、 「リーさーん! リーさん聞こえますぅ? 岡村ですぅ! 岡村めぐみ、おはぎのカアですぅ! 聞こえたら返事してくださぁい!」 声を大に、虹の国のリーさんに呼びかけたのだ。 え、ちょ、どうしたの? リーさんに何か用なの? てかリーさんってまだ現世と繋がってるのかな? おはぎが戻ったあとは声がしない、お迎え完了で回線(回線でいいのか?)切ったのかもしれないよ……と、思っていたのに。 【呼びましたぁ?】 すぐに返事が返ってきたのだ(レスポンス早っ!)。 それを聞いた大福は、お得な三尾をシュルルと伸ばし2人の腰に巻き付けた。 これでまたリーさんの声が聞こえるようになるはずだ。 いくらリーさんが返事をくれても、霊力(ちから)がなければ聞こえない。 2人に足りない霊力(ちから)を、お姫の妖力(チカラ)で有り余るほど補っていただいて初めて声が聞こえるのだ。 大福先生、いつもありがとござまっす! 「あ、返事してくれたーーー! リーさん、ありがとうございます! すみません、大きな声で呼んじゃって。でもリーさんとお話がしたかったんです。おはぎをはじめウチの仔達がお世話になってるんですもの。親としてご挨拶しておきたくて、」 ご挨拶…………って、ハッ! 確かにぃぃぃぃ! ど、どうしよ! さっき僕、さんざんリーさんと話したのに、ご挨拶どころかお礼もちゃんと言ってない! 30過ぎた大人のクセして恥ずかしいよぉぉぉ! 僕が悶絶していると、父さんも頭を抱えて悶絶しだした、ハハ…………やっぱり親子だな。 でもってウチのカアは頼りになるなっ! 「リーさん、ウチの仔達はどうですか? 良い仔にしてますか? ご迷惑かけてませんか? 特にトラ三兄弟は心配で……あ、でも良い仔達なんですよ。ちょっとウルサイけど、イタズラばっかりだけど。それからおはぎも。あの仔がこの世に来た経緯、人間の息子から聞きました。もう、本っっっっ当………………にっ! 申し訳ありませんでしたぁぁぁ!」 ”たぁぁぁ!” のトコロで、腰の角度は90度。 母さんがガバッと頭を下げた。 その数秒遅れで僕と父さん、それからきなこと大福まで頭を下げた。
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