第二十二章 霊媒師 岡村英海

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「リーさん良い人だったわね!」 母さんが笑顔で言った。 その表情は明るくて、無理に笑ってる感じではない。 良かった、元気になってくれて……と隣を見ると父さんもニコニコだ。 「なんだか2人とも嬉しそう。おはぎが帰っちゃって、もっと落ち込むかと思ってた。リーさんと話して安心したの?」 元気になって良かったと思う反面、不思議に思ってそう聞くと、 「リーさんと話せたのは大きいわ。でもそれだけじゃないの。元気が出た1番の理由はね……おはぎが最後に、私達の名前を呼んでくれたから……かな。びっくりしちゃったの。猫がヒトのコトバを話すなんて……でも聞き間違いじゃない、確かにおはぎが喋ったの。それが嬉しかったんだぁ。きっと……会えない間にたくさん練習したんだろうなって思ったら、カアも負けてられない、メソメソしてたら笑われるって……えへへ……ダメね、さっそく涙が出てきちゃった」 そう言って、輝くような笑顔で目尻を拭ったんだ。 ああ……もう。 猫ってすごいな、動物ってすごいな。 人を、僕達をこんなに幸せにしてくれるんだ。 嘘も打算もなにもない、純粋で真っ直ぐで、泣きたくなるよな綺麗な愛をくれるんだ。 おはぎも……歴代のウチの仔達も……雷神号もそう。 それからもちろんきなこも、そして……大福も。 この仔達が悲しむ事はしたくないし、大事に大事に愛したい。 そう……悲しませたくないんだよ。 僕は三尾の猫又を抱き寄せた。 ありがとね、大好き、そう思いながらギュッとする。 しばらくそのまま、ふかふか毛皮に顔を埋め、思いっきり匂いを嗅いだ。 良い匂いだなぁ。 本当に大好きだ、僕の愛しいお姫様。 姫が悲しむ事は絶対しない……なんて、それは当然か。 じゃあ過去の傷は? 大福は妖力(ちから)の強い猫又だ……けど、元々妖力(ちから)があった訳じゃない。 それは霊視で過去を視た時に思った事だ。 じゃあなんで今は猫又なのか。 それはきっと、前の飼い主さんに忘れられ、その悲しみが妖力(ちから)の箱を開けたんだ。★ 姫の妖力(ちから)が強ければ強いほど、あの日の傷が大きかったって事だ。 だから……だからさ、 「ねぇ、大福。一度、黄泉の国まで逝ってきたらどうかな?」 今からでももう一度、前の飼い主さんに会ってくるべきなんだ。 ★霊力(ちから)妖力(チカラ)が目覚めるキッカケの箱の話はこのあたりに出てきます…… https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=949&preview=1
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