2367人が本棚に入れています
本棚に追加
「リーさん良い人だったわね!」
母さんが笑顔で言った。
その表情は明るくて、無理に笑ってる感じではない。
良かった、元気になってくれて……と隣を見ると父さんもニコニコだ。
「なんだか2人とも嬉しそう。おはぎが帰っちゃって、もっと落ち込むかと思ってた。リーさんと話して安心したの?」
元気になって良かったと思う反面、不思議に思ってそう聞くと、
「リーさんと話せたのは大きいわ。でもそれだけじゃないの。元気が出た1番の理由はね……おはぎが最後に、私達の名前を呼んでくれたから……かな。びっくりしちゃったの。猫がヒトのコトバを話すなんて……でも聞き間違いじゃない、確かにおはぎが喋ったの。それが嬉しかったんだぁ。きっと……会えない間にたくさん練習したんだろうなって思ったら、カアも負けてられない、メソメソしてたら笑われるって……えへへ……ダメね、さっそく涙が出てきちゃった」
そう言って、輝くような笑顔で目尻を拭ったんだ。
ああ……もう。
猫ってすごいな、動物ってすごいな。
人を、僕達をこんなに幸せにしてくれるんだ。
嘘も打算もなにもない、純粋で真っ直ぐで、泣きたくなるよな綺麗な愛をくれるんだ。
おはぎも……歴代のウチの仔達も……雷神号もそう。
それからもちろんきなこも、そして……大福も。
この仔達が悲しむ事はしたくないし、大事に大事に愛したい。
そう……悲しませたくないんだよ。
僕は三尾の猫又を抱き寄せた。
ありがとね、大好き、そう思いながらギュッとする。
しばらくそのまま、ふかふか毛皮に顔を埋め、思いっきり匂いを嗅いだ。
良い匂いだなぁ。
本当に大好きだ、僕の愛しいお姫様。
姫が悲しむ事は絶対しない……なんて、それは当然か。
じゃあ過去の傷は?
大福は妖力の強い猫又だ……けど、元々妖力があった訳じゃない。
それは霊視で過去を視た時に思った事だ。
じゃあなんで今は猫又なのか。
それはきっと、前の飼い主さんに忘れられ、その悲しみが妖力の箱を開けたんだ。★
姫の妖力が強ければ強いほど、あの日の傷が大きかったって事だ。
だから……だからさ、
「ねぇ、大福。一度、黄泉の国まで逝ってきたらどうかな?」
今からでももう一度、前の飼い主さんに会ってくるべきなんだ。
★霊力や妖力が目覚めるキッカケの箱の話はこのあたりに出てきます……
https://estar.jp/novels/24474083/viewer?page=949&preview=1
最初のコメントを投稿しよう!