第二十二章 霊媒師 岡村英海

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『……うな?』 お姫は最初、僕の言った言葉の意味が分からなくって、小首を傾げて『なんで?』と聞いた。 だから僕は、正直に今の気持ちを話したの。 「大福はおはぎに話してたよね。僕の事が好きだから、あまり心配をかけたくないって。……ありがとね、お姫は優しいね。僕の事、そんな風に思ってくれて嬉しいよ、…………でもね、嬉しい反面、淋しくもあったんだ」 可愛いお顔を両手で包み、僕は口を尖らせた。 すると姫は『……うなな?』と一言、僕の顔を覗き込む。 「なんでかって? そりゃあそうだよ。お姫は僕のなに? ペット? 同居ニャン? 違うでしょ、大福は僕の家族だ。キミは僕の娘であり姉であり妹、大事な大事な家族なの。なのにさ、心配かけたくないからってさ、辛かった事ナイショになんかしちゃってさ、イチニャンで抱え込んじゃってさ……僕ってそんなに頼りない? 話してくれたら良かったのに、辛かったってひっくり返って泣いたら良かったんだ。そしたら僕も一緒に泣いて、散々泣いてスッキリしたら、抱っこで一緒に眠ったのに」 何度ひっくり返ったって良いんだ。 しつこいくらいに辛かったって、僕に当たれば良いんだよ。 そしたら僕は、それをぜんぶ受け止めるから。 僕の目をジッと見つめる大福は、なにかを言おうとお口をパクパクさせたけど、吸った息を吐くだけにとどまった。 「あのね、”心配かけたくない” なんて思わなくていいの。迷惑かけるかもとか、そういうのもぜんぶいらない。大体さ、大福はどうなのよ。いつだって僕を助けてくれるじゃない。W県の修行の時もそう。(おさ)に襲われた僕を炎の中救出して、自分は火傷だらけでさ、僕の方がよっぽど____」 ”心配かけてるでしょ!” と、続けようとしたんだけど、【襲われた】【炎の中の救出】【火傷だらけ】この3つのワードに母さん達がギョッとしたもんだから、慌ててゴニョゴニョごまかした。 「な、な、なーんちゃってー! や、その、そんな事があってもお姫はきっと助けに来ちゃうんだろうなぁって、モ、モノの例えだよ!……あは……あははははは! …………と、とにかく! 最終的に何が言いたいかというと、今からでも黄泉の国に逝って、前の飼い主さんに会ってきた方が良いって事だよ。大福は今でも飼い主さんが好きなんでしょう? だったら、もう一度会いに行って好きだって気持ちを伝えるの。たとえ覚えてなくてもその方がスッキリするよ。それに……さっき母さん達も言ってたけど、忘れたくて忘れたんじゃないと思うんだ。覚えていたかったに決まってる、ただ、ご病気がそれを叶えなかっただけだ」 言いたい事はぜんぶ言った。 あとは大福の判断だ。 僕が良かれと思っても、本ニャンは気持ちの整理がつかないかもしれないし。 大福は……なんと答えるだろう。
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